天城山のブナ林の植物社会学的研究
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概要
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伊豆半島の天城山において,34の調査区を設定し,植物社会学的な調査を行なった。それらの種類組成を比較検討した結果,天城山のブナ群落は,(1)ブナースズタケ群集,(2)ブナーコアジサイ群集,(3)ブナーモミ群落の2群集1群落にまとめられた。(1)ブナースズタケ群集は,種類組成が単純で,天城山の戸塚峠以西の海抜900〜1200mに多く見られる。この群集は,アマギザサを識別種とするアマギザサ亜群集とそれを持たない典型亜群集に下位区分された。(2)ブナーコアジサイ群集は,アセビ,コアジサイ,コミネカエデ,イトスゲなどをもつことによって,ブナースズタケ群集とは区分できる。本群集は,天城山の主峰,万三郎岳を中心とする海抜1200m以上に分布し,トウゴクミツバツツジ,アズマシャクナゲをそれぞれ識別種とする,トウゴクミツバツツジ亜群集とアズマシャクナゲ亜群集及び,それらをもたない典型亜群集に区分された。(3)ブナーモミ群落は,林床にモミ,オシダ,フジシダが出現するブナ林で,カワゴ平の軽石地帯のみに見られた。この群落は,ブナーコアジサイ群集とその下部に位置するモミーシキミ群集との移行帯に見られる群落と推定される。天城山のブナ林は,アセビ,ヒメシャラ,イトスゲなどが多く,丹沢山地のヤマボウシーブナ群集とは,その標徴値とされているヤマボウシ,サンショウ,イヌシデ,ヨグソミネバリ,ハリギリなどがほとんど出現しないので,別に区分した方がよいと考える。また筆者は,林床にササが密生することによって,その組成が著しく単純化したブナ群落に対して,ブナースズタケ群団の典型群集としてブナースズタケ群集を認めた。この群集は,天竜川上流において最初に報告された鈴木時夫(1949)のブナースズタケ群集の中核をなす部分に相当するので,この鈴木の命名を尊重した。さらに,ブナーコアジサイ群集については,箱根のアセビーリョウブ群落及び,イトスゲーリョウブ群集に,立地,種類組成的にも類似していることから,この群集は,丹沢山地のヤマボウシーブナ群集より一歩環境のきびしい条件下に成立する群集ではないかと考えられる。ブナースズタケ群集,ブナーコアジサイ群集は,ブナースズタケ群団,ブナーササオーダー,ブナクラスにまとめられる。ブナーモミ群落についても,その組成から同様の上級単位に属するものと考えられる。
- 1987-03-25
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