評価懸念および自己制御感から観た児童の学校不適応感の測定について
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概要
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児童が抱く不適応感は,児童の自分自身や環境に対する認知の仕方と関係が深いものと考えられる。そこで,自己強化基準の認知として「自己制御感」と,自己と環境の関係の認知として「(他者からの)評価に対する懸念」を設定し,この両面から不適応感をとらえた。Watson & Friend (1969)の否定的評価懸念尺度を基に評価懸念尺度と独自に考案した自己制御感尺度を作成した。評価懸念尺度では,大学生への調査の結果から因子構造を確認した後に,児童用の評価懸念測定調査用紙を作成した。小学5,6年生を対象に調査した結果から,2因子からなる評価懸念尺度が構成された。自己制御感尺度は学校生活の18場面からなり,回答選択肢は自己制御の強い順に3ないし5個用意されてある。自己制御感測定調査用紙では投影法的手法を用い,想像のAちゃんの行動を回答として求めた。小学校5,6年生に実施した結果に基づいて,林の数量化3類により自己制御感の強い順に回答選択肢が並ぶことを確認できた。評価懸念尺度,自己制御感尺度,及び社会的望ましさ測定尺度(桜井,1984),YG性格検査の一部を同時に小学校5・6年生に実施して,これらの尺度得点の関係を検討した。評価懸念尺度,自己制御感尺度において両極の高得点あるいは低得点である場合には不適応感が示されるという仮説は,評価懸念尺度で支持され,自己制御感尺度でも一部支持された。本研究で提示した二つの尺度は,学級担任にとらえにくい児童の適応感の理解を援助するために作成を試みたものでもあるので,学級担任が把握している児童の様相や認知像と比較する方法を今後に開発する必要がある。
- 1992-10-31
著者
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