絵画鑑賞における芸術性評価要素に関する心理学的分析
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概要
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本研究では,キャンバス上に「何が描かれているのかわからない絵画」,すなわち抽象的表現による絵画を見るとき,鑑賞者は具象画を見る際と同様の基準でその絵画を鑑賞し評価するのか否かを,2つの実験を通して検討した。研究1では,絵画鑑賞に伴う感情の因子を抽出し,具象画と抽象画の与える印象の違いについて検討した。実験は,10枚の絵画(具象画5枚,抽象画5枚)を7件法のSD法尺度で評定するものであった。その結果,絵画鑑賞に関わる因子として,先行研究に準ずる4因子が抽出された。具象画と抽象画の印象の違いは,個性とバランスの因子において顕著であり,「具体的なフォルムの崩壊」が鑑賞者に直接的に影響を与えているものと考えられる。研究2では,主に,芸術性評価要素の構成が検討された。実験は,研究1にほぼ準ずる形で行われた。その結果,具象画では芸術性評価がやわらかさや,好みなど美的評価に基づいてなされ,抽象画ではおもしろさや個性に基づいてなされていることが見いだされた。本研究の結果から,ひとくちに絵画と言っても,具象画と抽象画とでは鑑賞者の側でもその鑑賞基準と評価基準が異なるものと思われ,その原因は「具体的なフォルムの崩壊」に求めることができると考えられた。
- 横浜国立大学の論文
- 1991-10-31
著者
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