音声処理研究の回顧と展望(音声研究会400回記念特別講演会)

概要

論文の詳細を見る
音声処理の分野は、20世紀における電子回路・電子計算機の出現により、飛躍的な発展をとげたが、なお未解決の課題が残されている.本稿ではこれらに関し、特に音声言語処理に重点をおいて筆者の私見を述べる.まず、20世紀における音声処理分野の発展の動向とそれに寄与した重要な成果とを概観する.つぎに、音声言語と文字言語の本質的な差異をあげ、筆者の提唱する「音声言語処理」の概念を説明し、それらが複数の学問分野に関わること、その課題の解決には学際的なアプローチが必要であること、また、音声言語に含まれる言語以外の情報、たとえばパラ言語情報や非言語情報の重要性について言及する.さらに、現在主流となっている、機械による音声言語処理のアプローチの欠陥を指摘し、人間における音声言語処理の過程から学ぶ必要性を述べる.最後に、音声言語によるコミュニケーションにおける究極の情報源と受信者が、人間の「心」であることを指摘し、問題の最終的な解決には、心のモデル化が必要であることを述べる.
社団法人電子情報通信学会の論文
2006-11-02