2つの流動性選好と「流動性のわな」 (小野浩教授記念号)
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概要
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本稿では,貨幣需要関数の「流動性のわな」と呼ばれる状況について,新たな視点から理論的考察を展開している。 Keynesの「流動性」概念には,『貨幣論』における流動性概念と『一般理論』における流動性概念の2つが存在する。『一般理論』のそれは,投資資産としての貨幣需要の概念であり,『貨幣論』のそれは,準備資産としての貨幣需要の概念である。2つの流動性選好は共に将来の不確実性に対処するための選択である。しかし,より厳密に比較すれば『一般理論』での流動性選好における不確実性とは,Knightの区分によれば「リスク」に相当する。他方,『貨幣論』での流動性選好における不確実性は,「リスク」とは明確に区分されたKnightによる狭義の「不確実性」に相当する。したがって,2つの異なる流動性に対する選好が,それぞれ標準的貨幣需要関数において果たす役割は異なる。『一般理論』における流動性選好は標準的貨幣需要関数が利子率の減少関数であることを示し,『貨幣論』におけるそれば標準的貨幣需要関数のシフトを示すことになる。結果として,データの散布図に示される利子弾力的な貨幣需要関数の形状は「不確実性」の下で貨幣需要曲線のシフトを伴った「貨幣需給均等式」の軌跡であることが示されている。
- 2007-01-25
著者
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