アフィニティークロマトグラフィーによる犬糸状虫酸性プロテアーゼの精製とその性状についての研究

概要

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犬糸状虫の酸性プロテアーゼの新しい精製法を開発した。すなわち,犬糸状虫乾燥虫体からクエン酸バッファー,pH3.1を用いて抽出した粗酵素について直ちにペプスタチンーアガロースゲルによるアフィニティークロマトグラフィーを行い,得られた酵素分画について同じペプスタチンーアガロースゲルによる再クロマトグラフィーを行った。そして最後にセファデックスG-75によるゲル濾過を行い,得られた酵素分画,A-IIGの性状について分析した。乾燥虫体9gから酵素分画A-IIGは1.7mg得られ,精製度は粗酵素分画の97.4倍であった。A-IIG分画をpH8.3用ゲルを用いたディスク電気泳動によって分析したところ,蛋白染色によって5本のbandが検出され,そのいずれにも酵素活性があることが確認された。また,A-IIG分画はSDS-ポリアクリルアミドゲルースラブ電気泳動では1本のbandとして泳動され,マーカープロテインとの比較から,分子量は約42,000〜43,000であろうと推定された。次に酸性プロテアーゼの代表的な酵素であるペプシンやカテプシンDを用いて,A-IIG分画(犬糸状虫プロテアーゼ)の酵素学的性状を検討した。ヒトヘモグロビンを基質としたときの犬糸状虫プロテアーゼの至適pHはpH2.8-3.6にかけてで,ペプシンの至適pH(pH2.0付近)に比較してカテプシンDの至適pH(pH3.0〜4.0)に近かった。基質特異性の検討では犬糸状虫プロテアーゼもカテプシンDもペプシンと異なりヘモグロビンやミオグロビンをよく水解したが,卵白アルブミンやγ-グロプリン,エデスチンなどは水解しにくい傾向がみられた。3酵素とも放線菌産生の酸性プロテアーゼの阻害剤であるペプスタチンによって強力に阻害された。以上の結果から犬糸状虫プロテアーゼはカルポキシルプロテアーゼの仲間に分類されるカテプシソD様酵素であろうと推察された。
群馬大学の論文
1985-03-30

アフィニティークロマトグラフィーによる犬糸状虫酸性プロテアーゼの精製とその性状についての研究

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