商業政策における振興・調整政策の展開 : 小振法と大店法の運用にみる調整の時代における商業政策の評価(その(1))
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本研究は,わが国商業政策の流れのなかで調整の時代とよばれる1974年から2000年の間の政策体系を評価することを目的としている。本研究は2編からなるが,そのうちの前半にあたる本稿は次稿で政策の評価をする前段階として,わが国の振興政策,調整政策それぞれの展開過程を整理しその特徴を抽出することを直接的な目的としている。わが国の振興政策の基本的なスタンスは中小零細小売業の独自性を育成するのではなく,中小零細小売業を大規模小売業と同じ競争の土俵にのせるべく意欲的な事業者を結集してスケールメリットを発揮できるようにしようというものであった。そして,振興政策の中心となってきた小振法の特徴は,その主な支援の受け皿が商店街などの組合組織であったことと流通近代化理念のもと相対的に比較的規模の大きな事業者のみが支援の実質的な対象であった点にあると考えられる。一方,わが国の調整政策は大規模小売店舗の事業活動の抑制というかたちで進められていた。そして,その政策の中心となってきたのが大店法であった。大店法の特徴は,形式的には建物の規模に応じた面積規制であったが実際には資本規制というかたちで運用されてきたこと,行政の裁量に強く依拠した通達運用が重視されてきたこと,基本的に既出店の店舗に対する規制ではなく新規出店に際しての規制であること,歪んだ地元主義のものに運用されてきたことなどであったと考えられる。振興政策の中心法である小振法と調整政策の中心法である大店法はつねにセットで機能するように意図されてきたことから,次稿では両者の関係を理念・運用の両側面から検証し,当時代の商業政策の評価ならびにその手法であった商業調整の意味について検討する。
- 2006-03-31
著者
関連論文
- 商業政策における振興・調整政策の展開 : 小振法と大店法の運用にみる調整の時代における商業政策の評価(その(1))
- イギリスにおける小売業の上位集中化傾向の進展
- 商業調整政策の特殊性とその背景 : 小振法と大店法の運用にみる調整の時代における商業政策の評価(その(2))
- 商業政策の決定要因としての消費市場 : フロリダ州中北部地域における市場外流通の事例を通して
- 大店内「大型店問題」--大規模小売店舗内における零細小売業の構造変動
- 零細小売業における商店数減少問題の地域性--零細小売業商店数変動のマクロ分析を通して
- 大店法の実効性と零細小売業--小売業調整政策と小売業構造の連動性に関する序論
- 零細小売業の分類および小売業構造における地位
- 零細小売業の認識
- 台湾における小売業の特質とその動向
- 調整の時代における小売商業政策の運用体系--政策と構造の運動性の視点から