垂直加熱面を有する潜熱マイクロカプセルスラリー充填矩形蓄熱槽の蓄熱特性に関する数値計算(熱工学,内燃機関,動力など)
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概要
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内壁面のうちの一側面を加熱熱源とする短形蓄熱槽は、工業的な応用が多い基礎的な形態であり、従来から多くの研究がなされている。Eftekharらはパラフィンワックスを充填した垂直フィンを有する短形蓄熱槽の下面を加熱した場合における固駅境界線の移動を詳細に検討し、熱移動に関する実験整理式の提案を行っている。平田らは氷およびパラフィンを充填した短形蓄熱槽の下面を加熱した場合において、蓄熱材固相が固定されて移動しない場合と固相が浮力により移動し加熱面と接触する場合を比較することで接触融解の効果について検討を行っている。斉藤らも分割フィンを有する短形蓄熱槽を用いた蓄熱において接触融解の効果を検討している。これらの短形蓄熱槽の潜熱蓄熱に関する既往の研究は全て固液相変化を伴う水、パラフィン、低融点の金属などの物質を蓄熱材とするものであり、その蓄熱過程における熱源から蓄熱材への熱伝達特性や蓄熱完了時間、蓄熱材の移動といった蓄熱挙動は、蓄熱材の相状態、すなわち流動可能な液相であるか、流動しない古相であるかに強く依存している。一方、本件で対象とする潜熱マイクロカプセルスラリーはマイクロカプセル芯物質がその融点温度以下で凝固した状態においても、分散媒により流動性は維持され、蓄熱材スラリーを巨視的に観察した場合には固相蓄熱材の壁面への固着も発生せず、固液境界も存在しない性質を有している。融解・凝固の際の固液境界は個々のマイクロカプセル内に存在するのみである。このため蓄熱挙動を支配する要因は前述のような潜熱蓄熱に関する従来の研究とは大きく異なり、マイクロカプセル芯物質の相状態や潜熱マイクロカプセルスラリーの温度および潜熱マイクロカプセルの質量濃度による物性と僭熱量の変化が現象を支配する要因となる。このような潜熱マイクロカプセルスラリーの蓄熱材として用いた場合の非安定な蓄熱挙動を解明するため、潜熱マイクロカプセル質量濃度、蓄熱槽寸法、蓄熱熱源となる加熱壁面の温度などを操作パラメータとし、それらが蓄熱過程における加熱面から蓄熱材への熱伝達特性、蓄熱量および蓄熱材融解割合の経時変化、蓄熱完了時間などに与える影響を本研究において数値解析により検討した。This paper has dealt with the Heat storage characteristics of the microcapsule slurry composed of phase change material (PCM) as a latent heat storage material and water. A rectangular cavity with a heating vertical wall, which was filled with the microcapsule slurry, was selected as the present research model. The heating wall temperature, the width of the cavity and the PCM concentration were set as parameters. It was clarified that the transportation of latent heat evolved by melting of the PCM in the slurry exerted on a remarkable influence on the natural convection heat transfer. In addition, it was found that the heat transfer coefficient reached a local maximum value with an increase in initial temperature difference between heating wall and PCM. The heat storage completion time also have a local maximum value with an increase in heating wall temperature due to the latent heat by melting the PCM in the slurry.
- 2004-01-25
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