農業経営者能力について
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概要
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わが国の農業をめぐるきびしい内外諸条件の下で, 農業の近代的産業としての発展を成し遂げるためには, その発展推進を担当すべき中核農家の経営者能力の育成が基本的に重要な問題となってくる.その経営者能力とは, 農業経営主体が自らの生産条件や立地条件を考え, また社会経済事情の動きも考慮した上で, 長期的な見通しに立つ経営計画を作成し, これを自主的に, 合理的に運営する能力を指すものであるが, この経営者能力はその内容のちがいに基づいて, 経営技能と知性に分けて考えることができる.この経営者能力が充分な力を発揮するたこめには, 経営技能と知性の両者の機能が相互協力的に働かねばならず, いずれか一方の働きだけでは充分ではあり得ない.そのため上述の中核農家についての経営者能力の育成も, これら両者の養成, 修得を併行しやすい青年層の農家を対象とすることになりやすい.その知性とは職業的なものであるよりも, 経営主の頭の働きを旺盛にするものであり, 知性を高めることによって見識は高まり, ものごとの合理的な在り方を考える力が強化される.さらにまたそれは経営技能の本格的な修得にも役立ち得るものとなる.この知性の養成は, 先ず農家に一般的な知識を得させることからはじまる.それは農家の自発的な読書によっても得られるが, 多くの場合指導者による指導がその主流をなすであろう.このようにして得られた知識が, 単なる物識りに終わることなく, 知性を高めることになるためには, その知識は整理, 組織化されねばならぬが, それはその知識を用いて何か一つの難しい仕事を成し遂げてみることによって推進される.またそれはゼミナールの方法を通じても推進されることもある.このようにして一度高まった知性は, いろいろな問題の解決に役立つことができる.次に経営技能は企業的な感覚をもってする農業経営の運営に, いろいろな形で直接的に役立つ性質のものであるが, それは知性の裏付けを得て存分に働き得るのである.経営技能は指導者の手ほどきによっても修得できるが, これは実際活動上の経験を通じて身につけることができる.すなわち商品生産活動に直接接触したり, あるいは協業運営の責任を分担したり, または優秀農家の下に住みこんで働き, その言動を通じていろいろなことを学んだりすることによって経営技能は磨かれる.また優良事例の視察もその方法よろしきを得るならば, 経営技能の水準引上げに役立つであろう.
- 鹿児島大学の論文
- 1972-03-30
著者
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