砕石場跡地でのアカマツの窒素代謝
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概要
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1)大阪の郊外,植生回復の初期段階にある砕石場跡地でのアカマツの窒素代謝を,針葉のデモグラフィーを通じた窒素の動態から調べた.2)樹齢13年,樹高4.7m,生体量67kgのアカマツ孤立木Aの場合,生葉中の窒素量は生体全体量の半分,また樹冠下の土壌を含めた土壌-植生系全体の3分の1を占めた.落葉リターはAo層の窒素集積量の90%を占めた.3)アカマツの葉は4月に農薬をはじめ,8月に成熟サイズに達した.落葉は2年目の11〜12月に集中するが,一部は3年目の9月まで着葉していた.葉の窒素含有率は展葉直後がもっとも高く,7〜8月まで滅少し,その後増加して10〜11月に安定期に達し,3年目では徐々に低下した.落葉の窒素含有率は,安定期の2年葉よりかなり低かった.この差を老化にともなう樹体への回収とすると,その回収率は55%で,隣接アカマツ林の21%を大きく上回った.4)2年葉を除去した枝では,とくに表土がない場所のアカマツにおいて,1年葉の成長さらに窒素含有量が大きく低下した.5)Ao層中の葉部リターの窒素集積量は,7月から10月の期間内に低下した.6)以上の結果にもとづき,孤立木が1年葉の成長にともない必要とする窒素を,旧年葉の老化にともなって樹体へ回収される窒素と,またAo層リターの分解過程を通じ根から吸収される窒素と,どのようにリンクさせているかを考察した.7)葉量/非同化器官量比が大きくて生産効率が高い樹形,さらに葉の成長過程を通じた樹体内転流が,一次生産に対する窒素の利用効率とどのように関連しているかを考察した.8)孤立木Aを対象に,その土壌-植生系の発達過程を通じた系内への窒素の集積過程をシミレーションした.その結果,孤立木は,成長過程を通じ葉中窒素の半分しか存在しない土壌窒素で葉の窒素代謝をやりくりしてきたことが明らかとなった.現在,3.3g Nm^<-2>y^<-1>の速度で系内窒素量が増加している.その供給源についても考察した.
- 2003-03-31
著者
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岡崎 亜矢
大阪教育大学教養学科
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上田 哲也
大阪教育大学教養学科
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稲田 有希
大阪教育大学教養学科
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米田 健
鹿児島大学農学部森林管理学講座育林学研究室
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塚本 恵子
大阪教育大学教養学科
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恒川 法子
大阪教育大学教養学科
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米田 健
大坂教育大学教育学部
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米田 健
Department Of Environmntal Sciences And Technology Faculty Of Agriculture Kagoshima University
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米田 健
大阪教育大学教育学部理科教育教室
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米田 健
鹿児島大学農学部
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