スギ高齢林分の樹冠構造について(II) : 岩手大学滝沢演習林89年生林分の場合
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概要
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本研究はスギ高齢林分の樹冠の形態および構造を明らかにすることを目的としている.今回は, 岩手大学滝沢演習林のスギ89年生の非常に高齢な林分について解析を行った結果, 次のことが明らかになった.なお, 調査は直径と樹高の毎木調査(Table1), 陽樹冠基部高と樹冠直径の標本木測定, および標準木8本の伐倒による層ごとの生葉重と生枝重の直接測定(Table2)を行った.1.直径と樹高, および直径と陽樹冠基部高の関係は前回の報告とほぼ等しい関係(前者は直線か多少上に凸, 後者はほぼ直線)が認められた(Fig.1).2.樹冠拡張係数は, 直径の増加とともに大きくなる傾向が認められ, これまでの結果と異なった(Fig.2).3.直径と樹冠表面積の関係は樹高のそれより相関が高く, これまでの結果と同じであった(Fig.3).4.葉と枝の垂直分布様式は, 標準木の属する樹高層により違いが認められた(Fig.4).5.梢端からの距離と積算葉重の関係にアロメトリックモデルとリチャーズモデルをあてはめた結果, ともに非常によく適合した(Table3,Fig.5).6.直径といくつかの樹冠要因(陽樹冠表面積, 全葉重および陽樹冠部の葉重)の間の関係は, 直径と樹冠表面積の関係と同様に直線的であった(Fig.6).7.直径に対する樹冠表面積あたりの葉重はほぼ一定で, 皆伐林および択伐林の中層以上の研究結果と同じ値(3.5kg/m^2)であった(Fig.7).8.直径と樹高の定期成長量(5年間)の経年変化の様子は, 全成長期間を通して異なっていた(Fig.8,9).9.直径と断面積の定期成長量の垂直分布を比較し(Fig.10,11), 断面積の成長パターンの方が成長モデルの構築に都合がよいことが認められた.10.非常に高齢な今回の林分でも, 樹冠表面積と幹材積成長量の間に直線的な関係が存在していることが認められた(Fig.12).以上から, 非常に高齢な林分であっても, 樹冠の形態および構造は葉重量のような生態的な要素と密接な関係が存在し, さらに樹冠量と成長量にも密接な関係が存在することから, 樹冠を基礎にした林分の施業指針の作成が可能であると考えられた.
- 1993-03-31
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