薩南諸島における山羊の経営と飼養実態
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概要
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山羊飼養の最近の新しい動きに注目し, わが国における山羊飼養の位置づけと経営的意義について, 再検討する必要がある.そこでわが国有数の山羊飼養地帯である薩南諸島の山羊の経営と飼養実態について調査した.調査は1976年から1979年の3年間にわたり, 11の島について実施した.調査戸数は303戸, 頭数は1010頭に達し, これは薩南諸島全体の約2割に相当する.各飼養家を個別訪門し, 経営概況および飼養実態について聞き取りを行った.要約するとつぎのとおりである.1.わが国の山羊の飼養頭数が, 1960年代以降急速に減少したにもかかわらず, 薩南諸島における飼養頭数の減少傾向は緩慢であり, また最近に至っては増加の傾向にさえある.したがって薩南諸島における山羊は, 依然として根強く飼養されているといえよう.2.飼養頭数の占有割合からみて, 薩南諸島における山羊の主産地は, 奄美大島, 徳之島, トカラ列島および喜界島であり, とくにトカラ列島の飼養頭数の伸びが著しい.3.山羊は自給用に飼育するものが圧倒的に多いが(68.3%), 奄美大島以南では販売されるものも比較的多く, 最近はとくに沖縄むけの販売が増えつつある.4.山羊の飼養用途では, 肉用が最も多く(56.5%), ついで肥料用(30.4%), 愛玩用(7.7%)となっている.とくに奄美大島以南では肉用が多く, 種子島および屋久・口永良部島では肥料用が比較的多くみられた.5.山羊飼養家の職種は, 農業が圧倒的に多いが(75.2%), その他自由業・商人, 公務員, 教員, 漁業者および土建業者と, かなり広範囲の職種にわたって飼育されている.6.山羊の飼養管理方式では, 舎飼い方式が最も多く(68.3%), ついで繋牧方式(26.6%)となっている.放牧方式はトカラ列島全域と, 徳之島および与論島の一部でみられるのみである.7.山羊の給与飼料は, 雑草類が圧倒的に多く(86.6%), 牧草や濃厚飼料は一部にすぎない.8.山羊の年令構成は0才のものが圧倒的に多く(62.4%), 1才以後急速に減少し, 平均年令は1.13才と若い.このことは大半の山羊が1才時で屠殺され, 肉用に供されていることを示す.9.2〜5月に分娩するものが, 全体の58.7%を占め, 春頃に分娩のピークが認められる.しかしながら春以外の各月ともまんべんなく分娩がみられ, 全体的に周年繁殖の傾向を示した.とくに南下するにつれてその傾向が強い.10.山羊肉の料理法は, 山羊汁が一般的であり, その他チーイリチャ, 鉄板焼き, スープおよび刺身として利用される.11.現在, 山羊肉は生体1斤当り600円(1000円/kg)で取引きされている.
- 1983-03-15
著者
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