Freesiaの花色に関する研究 : 第1報 アントシアニンの同定と園芸種における分布について
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概要
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Freesiaの園芸種はF.refrectaとF.armstrongiiとの種間雑種に由来するとされているが, 今日では両野生種にみられない広範な花色を獲得するに至っている.本実験はこの植物における花色の遺伝様式を解明するため, そのてはじめとしてアントシアニンの同定とこれらの分布の様相に関し調査を行なったものである.えられた結果の概要はつぎの通りであった.1.同定された色素はアントシアニジンに関して5種類, グリコシル化に関して2種類のパターンを組み合わせたもので, 具体的にはdelphinidin-3-glucoside, delphinidin-3.5-diglucoside, petunidin-3-glucoside, petunidin-3.5-diglucoside, malvidin-3-glucoside, malvidin-3.5-diglucoside, cyanidin-3-glucoside, cyanidin-3.5-diglucosideおよびpeonidin-3-glucosideであった.2.これらのアントシアニンの分布に関しすべての品種は3-glucoside型か3.5-diglucoside型かのいずれかに整然と分けられた.もちろん多数の供試材料のなかには3-glucoside型でありながらごく微量の3.5-diglucosideが共存するもの, およびその逆のものもないわけではなかったが, 変異は明らかに不連続であった.このことはこれら両配糖体の生成が1個の主遺伝子によって規制されていることを示すものと解釈された.3.これに対しヒドロキシル化とメチル化に関しては, 事態はかなり複雑であった.すなわち, 両者とも変異の範囲は一方の純粋型から混在型までで終っており, 他方の純粋型を欠いていた.また両者ともその範囲内ではグリコシル化に比べ, 変異は明らかに連続的に推移した.これはとくにメチル化について著しく, 多数の遺伝子が関与していることを暗示した.4.メチル化はまたグリコシル化と密接な関連をもっていた.すなわち, 高度にメチル化されたグループは3.5-diglucoside型が大部分であったのに対して, 低度のものは3-glucoside型にほぼ限られていた.このことはこれら両過程にあずかる遺伝子が同一染色体上にあって, 互に密接に連鎖していることを示すものと考えられた.本実験の遂行に当たり, 坂田種苗KKの武田和男氏にはSuper Giant系種子の提供を, また塩谷秀夫氏と徳永幸恵嬢には著者の前任地, 山口大学において実験上の協力をいただいた.記して深い謝意を表する.
- 1974-03-20
著者
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