3.屋久スギ天然生林の林分構造とその生長について
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概要
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屋久島のスギ天然生林分を, 永続的に保持しながら木材生産を行なう施業を明らかにすることを目的に, ヤクスギランド内に位置する固定プロット(二人だけの小径1.Oha : 1973年設定)の一部を再測して, 屋久スギ天然生林分の林分構造とその10年間の生長を明らかにした。1)針葉樹(スギ, ヒノキ, ツガ)には本数の変化は見られなかったが, 広葉樹, 特にサクラツツジ, ハイノキの進界による本数増加が見られた(Table1)。2)小径級(24cm以下), 中径級(26〜38cm), 大径級(40cm以上)の本数割合は, 10年前が88 : 5 : 7で現在が89 : 5 : 6あったのに対して, 材積割合はそれぞれ9 : 7 : 84,10 : 8 : 82であった(Table2)。3)全林木の直径・樹高分布とも典型的なL型分布を示していた。直径分布は, 右への遷移(直径の増加を意味する)が認められるものの, 進界木の影響でモード, 平均とも10年前とほぼ同一であった。樹高分布は, 明確な右への遷移が認められ, モードが5mから7mに, 平均も7.6mから9.1mに増加していた(Fig.3,4)。4)過去10年間の進界生長量を含む年平均純生長率は, 林分全体では1.73%であり, スギだけの生長率は1.98%, 広葉樹では2.12%であった(Table5)。5)径級別の生長率は, 小径級が3.55%で最も高く, 小・中径級の林木が生長の主体であった(TabIe6)。6)今回得られたデータを基に, 1.Ohaの固定プロット全体の生長量および, その生長率を推定したところ, 全体では2.06%(95%の信頼区間で0.37〜3.47%)であり, スギだけでは2.08%(同0.41〜3.27%), 広葉樹では1.93%(同0.14〜4.20%)であった(Table7)。
- 1985-03-25
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