ツクシガイ科の新属ノミテツヤタテ属Thalutaとその新種の記載
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概要
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ノミテツヤタテThala maxmarrowi Cernohorsky,1980をタイプ種として新属Thalutaを提唱し,その属の第2種として従来ノミテツヤタテに混同されていた日本産の種類をオゴクダヤタテThaluta takenoko n.sp.として新種記載した。Thaluta n. gen.ノミテツヤタテ属(新属)貝殻は小型(10mm以下)で,幼貝では均整のとれた紡錘形だが,成長すると殻口前部が著しく側方に張り出す。胎殻は平滑。成殻の初期螺層では縦肋が強いが,体層では弱まるか消失する。微細で不明瞭な螺肋は成殻の一部あるいは全体にあり,体層の底部には5〜7の強い螺肋が現れる。成貝では軸唇に4つの襞と厚い板状の滑層が,また殻口外唇内側には襞を持つ。タイプ種(原指定):Thala maxmarrowi Cernohorsky,1980ノミテツヤタテ付記:本属は殻口外唇内に襞を持つことでThalaと異なり,また成熟個体で殻口外唇下部が外向きに広がることで他のツクシガイ科のいずれの属とも異なる。また,ガクフボラ科の一部の種類で見られるように,軸唇の最も前端に位置する襞が,水管溝の左側の境界を形成することもツタシガイ科のほかの属ではみられない特徴である。Thaluta takenoko n. sp.オゴクダヤタテ(新種新称)殻はノミテツヤタテに酷似するが,やや小型で殻高5.9mmまで,殻の地色もやや暗い。彫刻も弱く,体層で縦肋が消失する。最も顕著な違いは胎殻の形と螺層数にあり,ノミテツヤタテの胎殻が4層かそれ以上あるのに対して,本種では1.5層かそれ以下で,より脹らみが強く,殻質が薄い。タイプ標本:ホロタイプ,ANSP 410355,殻高5.4mm。パラタイプNo.1,NSMT-Mo 73573,殻高5.9mm。タイプ産地:和歌山県串本町潮岬オゴクダ浜(打ち上げ)分布:これまでのところ紀伊半島南部からしか採集されていない。生きた個体は水深20m付近(南部町沖)から,死殻は打ち上げ(潮岬)で得られた。近似種のノミテツヤタテが沖縄から南アフリカに至るインド西太平洋に広く分布するのに比して,本種の分布が著しく狭いのは,胎殻の形態から前者が長い浮遊幼生期を経るのに対し,本種は浮遊幼生期間を欠くと考えられることに起因するものであろう。
- 2004-01-31
著者
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カロモン P.
Department Of Malacology Academy Of Natural Sciences
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ローゼンバーグ G.
Academy of Natural Sciences
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カロモン P.
Academy of Natural Sciences
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