ドイツ個別決算書のIFRSへの対応(2)
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概要
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ドイツ個別決算書に対するIAS/IFRSの影響について,地域分析第43巻第2号で述べ,具体的な会計項目に言及して,会計基準の国際的コンバージェンスへの努力の過程を検討しようとした。周知の通り,2002年7月19日のEU-命令EU-Verordnung betreffend die Anwendung internationale Rechnungslegungsstandardsによって,ドイツ商法によるコンツェルン決算書に代わってIFRSによるコンツェルン決算書が作成できることとなった。さらに,個別計算書についても加盟国選択権MitgliedsstaatenwahlrechteによってIFRSへの道が開かれた。しかし,このEU-命令の効果は,単に商法的領域に留まるだけではなく,それに関連するドイツ税務計算にも及び,問題を複雑にしている。かつて,ドイツ商法に対する理解について,債権者保護を固執する論調が多くあることが指摘されてきたが,しかし,今日では投資家にたいする情報提供の決算書機能も強調されてきたことは事実である。個別決算書と国際会計基準との交渉の結末は今後の決算書の公表に俟たなければならないが,具体的なIFRSとHGBとの対決を完全に知るのはかなりさきのことである。ここでは,本誌前々号に引き続いて実務にも見られるIAS/IFRSとの相違に若干の会計項目(補遺部分も含む)を追加して,対応努力の実情を指摘するにとどめる。個別決算書のIAS/IFRSへの村応問題はコンツェルン決算書に比べてより深刻な問題を提僕する。すなわち,個別決算書はいわば桎梏とされる課税および配当支払機能Besteuerungs-und Zahlungsbemessungsfunktionを有するからである。上述のように,EU-命令§5によりISAは個別決算書にも容認されて,その作成の可能性につきコンツェルン決算書における改革同様に強い影響力を有するが,課税所得計算にも関連して重要な問題を提起をする点は無視できない。ここでは,IAS/IFRSへの対応の初期段階に触れるが,その対応の今後の過程は具体的に公表される個別決算書の検討を俟つしかない。その意味で,変革の前期段階を慨述するが,前稿を受けてまずIAS/IFRSとの会計処理の比較と調和化の可能性にふれる。
- 2006-03-31
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