下部白亜系および中部中新統の泥岩より産した化学合成二枚貝・スエモノガイ科の新属 Nipponothracia
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
北海道中央部に分布する前期白亜紀の後期アルビアンの前期(106 Ma), と三浦半島の中央部に分布する中期中新世初期(15 Ma)の地層から産出した, ともに良く似るスエモノガイ科の二枚貝化石を検討した。三浦半島の葉山層の粘土岩から採集された化石は, Shikama(1968)によってThracidora giganteaと命名された。しかし, 本種は殻が非常に大きく(殻長約140 mm), 厚く, 殻頂が中央にあり, その外形は楕円形で, 殻の後端に切断面がない, という特徴はワタゾコスエモノガイ属Thracidoraと大きく異なることから, 本属は同属に含まれない, との結論に達した。一方, 北海道三笠市の幾春別川支流の奔別(ぽんべつ)川の中部蝦夷層群下部のシルト岩から採集されたスエモノガイ科化石は円形に近い楕円形で, 三浦半島産の化石よりさらに大型(約180 mm)で, 厚い殻はよく膨らんでいる。この2種類のスエモノガイ科化石はスエモノガイ科の中で形態が特異であるので, これらをスエモノガイ科の新属としてNipponothracia属(ニッポンスエモノガイ)を提唱する。北海道の白亜紀(106 Ma)の新種N. ponbetsensisと三浦半島の中新世(15 Ma)のN. giganteaは両種とも泥岩中から合弁で産出し, 周辺に炭酸塩のコンクリーションを伴う。Nipponothracia属は, 化学合成細菌を体内に共生させていることが知られているSolemya属, Calyptogena属, Conchocele属と共産しているので, Nipponothracia属もこれらの属と同様の生態をもつ化学合成動物と考えられる。
- 1997-10-31
著者
関連論文
- 相模湾の沈み込み帯の冷湧水域に伴う炭酸塩類と化学合成独立栄養動物群集の環境
- 沈み込み帯における化学合成底生生物群集 : 相模湾のシロウリガイ類群集の過去・現在・未来
- 三浦・房総半島新第三紀三浦層群の石灰質ナノ化石年代および対比
- 38. 仙台市西部地域の茂庭層 (15∿16Ma) 産オキナエビス科化石(平成 6 年度大会(豊橋)研究発表要旨)
- 横須賀市野比海岸にみられる更新統宮田層の化石群集
- 房総半島南端の千倉層群白間津層産シロウリガイ類2種
- 三浦層群逗子層の泥岩分布地で滑動した層面すべり
- 1 三浦半島城ヶ島完新世段丘
- 相模灘産オキナエビスガイの海中における生態
- 11. 相模灘産オキナエビスガイの海中生態(日本貝類学会 60 年度総会)
- 574 相模湾沖ノ山堆列の微化石年代と相模トラフの沈みこみ帯(海洋地質)
- 三浦半島,横須賀市長沢地区における北武断層のトレンチ調査
- 三浦半島南部金田地域の噴砂現象:千葉県東方沖地震に伴う地盤液状化
- 50 凝灰岩鍵層による三浦層群の対比 : 三浦・房総両半島地域
- 第 2 回国際頭足類シンポジゥム : 頭足類その現在と過去
- 295. 相模湾、沖ノ山堆列の地質年代
- 現生チューブワーム生管における元素分布とその生息環境における炭酸塩基類生成
- 241. 相模湾, 初島沖で採集された自生の炭酸塩類
- 239. 三浦半島、葉山層群(15 Ma)の断層破碎帯から発見されたチューブワーム
- 三浦層群のクロノロジィと古環境に関する諸問題:日本地質学会第97年討論会の紹介と最近の研究の動向
- 中新統葉山層の化学合成動物群集の生息環境と三浦・房総地域新生界の群集
- 下部白亜系および中部中新統の泥岩より産した化学合成二枚貝・スエモノガイ科の新属 Nipponothracia
- 北海道白亜紀の化学合成動物群集の復元
- 三浦半島の枕状溶岩の発掘と産状に関する新知見 : 第三紀
- P-254 地域博物館の共催展示「伊豆・小笠原弧の形成と活断層」の開催
- 横須賀市自然博物館
- 609 仮称「東京湾口断層」について
- 11. 日本産オキナエビスガイ科全種の歯舌の形態比較(日本貝類学会平成 9 年度大会(神戸)研究発表要旨)
- 横須賀市野比地区における北武断層のトレンチ調査
- 6. 下部白亜紀 (104 Ma) と中期中新世 (15 Ma) 産スエモノガイ科の新属(平成 8 年度大会(鳥羽)研究発表要旨)
- 相模湾をしらべる
- 相模湾をしらべる
- 相模湾をしらべる--深海から生まれた三浦半島
- 逗子市沼間における1600mボーリングコアの石灰質ナノ化石年代
- 三浦半島北武断層の完新世における活動期と変位様式に関する考察
- 27. オキナエビスガイ科 Entemnotrochus 属 3 化石種の分類学的再検討(平成 3 年度総会(鳥羽市)研究発表要旨)
- 53 三浦半島の中新世サンゴ化石について
- プレ-ト境界に生息する貝--相模湾のシロウリガイ群集の現在・過去
- 北海道中央部,占冠地域の上部白亜系
- Trenching survey of the Kitatake fault at Nobi, central Miura Peninsula, Kanto, Japan
- タイトル無し