Modified Tardieu Scaleの臨床的有用性の検討 : 脳血管障害片麻痺患者における足関節底屈筋の評価
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概要
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Modified Tardieu Scale (MTS)は,関節可動域(Range of Motion; ROM)と筋の反応の質(Quality of Muscle Reaction; QMR)を測定する痙縮評価指標で,測定肢位と筋の伸張速度が規定されている特長がある。欧米ではMTSを用いた研究報告は多いが,信頼性や臨床的有用性を検討した報告は散見される程度である。国内ではMTSを用いた報告は見当たらない。今回,脳血管障害片麻痺患者の麻痺側足関節底屈筋を対象に,(1)ROMとQMRの検者内,検者間信頼性(n=13),(2)筋をゆっくり伸張した時のQMRと速く伸張した時のQMRの関連性(n=28),(3)QMRとModified Ashworth Scale (MAS)の関連性(n=30)の検討を行った。本研究の目的は,これらの結果からMTSの臨床的有用性を検討することである。測定肢位は背臥位で,膝伸展位と膝屈曲位とし,足関節底屈筋を他動的に伸張して測定した。筋の伸張速度は,MTSの規定速度であるV1(できるだけゆっくり)とV3(できるだけ速く)を用いた。結果,(1)ROMの信頼性は,検者内,検者間共にICC=0.98〜0.99,QMRの信頼性は検者内がκ=0.73〜1.00,検者間がκ=0.71〜1.00であり,高い信頼性を認めた。(2)V1のQMRとV3のQMRの関連性は,膝伸展位は弱い正の相関に止まり(r_s=0.39),膝屈曲位は相関を認めなかった(r_s=0.08)。(3)V1のQMRとMASの関連性は両肢位共に強い正の相関(r_s=0.89〜0.90)を認めたが,V3のQMRとMASの関連性は両肢位共に弱い正の相関(r_s=0.34〜0.38)に止まった。本研究結果では,MTSの高い検者内,検者間信頼性を認めた。さらにQMRは伸張速度を変えることで非反射性要素と反射性要素を考慮した評価が可能と考えられた。MTSは,痙縮評価指標として臨床的有用性が高いと示唆された。
- 2006-04-20
著者
-
竹内 伸行
本庄総合病院 リハビリテーション科
-
桑原 岳哉
本庄総合病院 リハビリテーション科
-
臼田 滋
群馬大学大学院 医学系研究科保健学専攻
-
臼田 滋
群馬大学医学部保健学科
-
田中 栄里
伊勢崎市民病院リハビリテーション科
-
臼田 滋
本庄総合病院 リハビリテーション科
-
田中 栄里
本庄総合病院リハビリテーション科
-
竹内 伸行
高崎健康福祉大学 保健医療学部理学療法学科
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