点滴灌水施肥(養液土耕)栽培における液肥の種類と土壌のリン酸・塩基改良が作物の生育に及ぼす影響
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概要
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養分保持能を有する土壌を利用した点滴灌水施肥(養液土耕)栽培において,リン酸・塩基の施肥は液肥から行うべきか予め土壌に加えるべきか検討するために,メロンおよびトマトの連作試験を行った.液肥種類として窒素単肥と窒素・リン・カリウム・マグネシウム・カルシウムを含んだ複合液肥を用い,作ごとに土壌化学性の改良を行う区と行わない区を設けた.土壌化学性の改良は,トルオーグリン酸300mg P_2O_5kg^<-1>,塩基飽和度80%という標準的なレベルを目標とした.この目標値は近年の施設土壌の養分含量よりも低い場合が多いと考えられる.また,土壌化学性の改良を行い,被覆肥料を中心とした施肥を行う慣行施肥区を設けた.1)作物の生育は液肥種類に大きく影響を受けた.土壌化学性の改良の有無にかかわらず,複合液肥区のメロン・トマトの収量やリン・カリウム吸収量は窒素単肥区よりも高かった.窒素単肥区では,土壌化学性の改良を行えば慣行施肥区と同等の収量が得られたが,生育が進むにつれてカリウムの供給が不足した.窒素単肥区において土壌化学性の改良を行わない場合には,果実の収量・糖度は著しく劣った.2)作物の根は吐出孔付近に集中しており,株間部分には少なかった.また,跡地土壌の塩基量は,吐出孔付近で減少し,株間部分では定植前とほとんど変化がなかった.したがって点滴灌水施肥栽培では,吐出孔付近の限られた部分からの養分吸収が多く,リン・カリウムについては土壌中に均一に施用するよりも,液肥から加えた方が作物の吸収に有利になると考えられた.3)本試験では作物の生育がカリウム供給量に大きく依存したため,マグネシウムやカルシウムはカリウムと拮抗的に作用し,マグネシウムやカルシウムの影響については判然としなかった.4)点滴灌水施肥栽培においても,定植前の土壌化学性は作物の生育に影響を及ぼすため,土壌分析による土壌診断を行うことが重要であると考えられた.
- 社団法人日本土壌肥料学会の論文
- 2005-04-05
著者
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林 康人
JA全農営農・技術センター
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新妻 成一
JA全農営農・技術センター肥料研究室
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久保 省三
JA全農営農・技術センター肥料研究室
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新妻 成一
Ja全農営農・技術センター
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久保 省三
Ja全農営農・技術センター肥料研究室:(現)ja全農本所
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林 康人
Ja全農営農・技術センター肥料研究室:(現)札幌市環境局環境事業部
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