幼児における状況手がかりからの自己情動と他者情動の理解
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概要
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本研究は,3歳から5歳までの状況的手がかりからの情動推測能力の発達過程について,自己と他者という2者間の違いに焦点をあてて検討する。課題は,「喜び」「悲しみ」「怒り」の3情動が発動される状況文について適切な情動を答える課題からなっており,主人公が被験児自身の場合である自己情動条件と,架空の人物の場合である他者情動条件が設定された。その結果,3歳児においては,他者情動条件よりも自己情動条件のパフォーマンスが有意に低かった。それに対して4歳児および5歳児においては有意差が認められなかった。反応内容を吟味した結果,3歳児の回答においては,自らの特定の経験に基づいた回答が多く,それにより自己情動条件のパフォーマンスが引き下げられていることが示唆された。これらの結果から「時間的拡張自己」といった高次の自己理解の獲得と情動理解の関連が議論された。また,どの年齢群でも「悲しみ」と「怒り」を混同することが多く,情動を惹起する社会的な表出規則についての理解が未獲得であることが推測された。
- 日本教育心理学会の論文
- 2006-03-30
著者
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