トウモロコシにおける蒸散流の環境依存

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根による吸水は,土壌-植物-大気連続体(SPAC)における水移動の重要な過程の1つである.本研究では,SPAC内での根の吸水に密接に関連しでいる蒸散流の理解を深めることを目的とした.そこで本研究では,トウモロコシ(Zea May L.)畑内の3地点において,蒸散流と環境誘因との関係について研究を行った.その結果,土壌-植物-水分の関係に対する環境影響は,空間的不均一性を持つことが示された.大気中の水分要因では,キャノピー内の大気の飽差や水ポテンシャルがキャノピー外のそれらに比べ,蒸散流との高い相関関係を示した.植物体の水ポテンシャルについては,植物上部の葉の水ポテンシャルが下部の葉や根の場合よりも高い決定係数を示した.土壌の水ポテンシャルのプロファイルでは,深さ0.1-0.3mでの土壌の水ポテンシャルが深さ0.4,0.5mのものよりも相関が低くなったが,これは,耕土層は様々な地上環境の変化の影響を受けやすいことや,根の吸水と土壌面蒸発や気孔反応の不均一性などとの複雑な関係に起因するためと考えられる.この結果は,野外における,土壌プロファイル内の土壌水分状態に対する根の水分吸収の応答には,大きな空間的差異が生ずることを警告している.環境エネルギー要因の面では,キャノピー上部の純放射量と蒸散流との相関性が,日射量や光量子束密度よりも密接な結び付きを示した.温度が根の吸水に及ぼす影響については,気温や葉温よりも,土壌温度との相関が高くなった.さらに,キャノピー抵抗と蒸散流との間には負の相関が認められた.また,地上部の環境要因のいくつかを蒸発散能の指標として組み合わせることにより,蒸散流とその指標との間に累乗関系が成り立った.以上の結果は,根の吸水活動のモデリング,特に野外において不均一な根の空間的分布状況を取り扱う場合には,SPAC内の環境プロファイルに対する生物学的応答の不均一性を十分に考慮すべきだということを明らかにした.
千葉大学の論文
2000-03-31

トウモロコシにおける蒸散流の環境依存

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