加速器の医学利用"粒子線治療の研究"

概要

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粒子線治療の研究は,現在,陽子線治療と重イオンの治療が焦点となって進められている。陽子線と重イオンは,共に飛程の終末部にBragg peakを作り,線量分布が優れている上に,重イオンには,X線には認められない生物効果が期待できるからである。重イオンは高LET放射線であり,X線と比較するとOER(酸素増感比)が低く,腫瘍に対するRBE(生物学的効果比)が高い。かつて,線量分布に問題があって,速中性子線では果たせなかった高LET放射線の生物効果と局所治癒との関連が重イオン治療によって追及できるようになった。放射線医学総合研究所の重イオン治療の研究は,1994年(平成6年)から始まり,Stage Iの肺癌,骨盤の骨肉腫,前立腺癌の治療に,優れた治療成績が示されている。また,炭素イオン(^<12>C)の照射中に生成する^<11>C(陽電子放出核種)によって,照射の精度をPETの画像上で確認できるようになった。一方,陽子線には,高LET生物効果は期待できない。治療の精度の向上と局所治癒の関連が,陽子線を用いて追及されている。粒子線治療が普及することによって,放射線治療への信頼が高まり,癌治療の分野にも新しい時代が訪れるであろう。
2003-12-17