ライフスタイルと危険選択
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概要
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今や「健康ブーム」と言われるほど,国民の健康に対する関心が高い。戦後始まった急激な疾病・死因構造の変化が,今日の寿命革命をもたらし,超長寿社会が到来しようとしている。当然のことながら,成人病とよばれる慢性疾患の発症を予防することの重要性が日ましに大きくなりつつある。保険医学が方法論的に得意とする大量のデータの長期観察によって,血圧,体格などのリスク・ファクター研究に大きな貢献をしてきたことは,衆知のとおりである。このような伝統を継承して,新たな健康科学の確立に寄与できないものであろうか。がん,循環器疾患など慢性疾患の発症には,数十年にわたる日常の生活習慣が大きな影響を与えていることを,いち早く見抜いたBreslow(カリフォルニア大学)が,有名なAlameda County Studyによって生活様式way of livingと健康度との関連性を明らかにした意義は大きい。しかも,全死因を総合した余命の予知因子を追求するというわれわれ保険医学の研究方法と軌を一にするものであったことも見逃してはならないであろう。今回は,Breslowのいう"7つの健康習慣"を紹介することからはじめ,いわゆるライフスタイルといわれている,食生活,栄養,喫煙,運動,行動パターン,宗教,ストレス,さらには性生活もふくめた諸要因の健康への影響を,主として疫学的研究の成果をとり入れながらレビューと解説を試みた。また,保険医学のもつ社会医学,予防医学の側面から,疾病進展の自然史とその予防対策についても論及し,いわゆる一次予防の重要性と,それによって保険医学が,単に保険事業の発展に寄与するだけに終らず,国民の健康福祉にも貢献できる役割を果たせるのではないかと考えるものである。さいごに,日常の危険選択実務における情報収集と危険評価に際して,ライフスタイル問題をどのように取扱うべきかについても若干の提言をした。
- 日本保険医学会の論文
- 1990-12-15
著者
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