保険医学と寿命予測について
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概要
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わが国における保険医学の"母"渡辺定の著書「寿命予測と生命保険」(1943年)は保険医学の教科書として,今なお不朽の名著の輝きを失っていない。彼はまた1950年代に,すでに今日の世界最長寿国を予想して「あなたの寿命革命」を世に問うている。保険医学と寿命学は死亡率研究という母から誕生した双子だと言ってもよいだろう。本学会が世代交替の時期を迎えている現在,古典的に過ぎるかも知れないことを承知で,若手会員のために先輩から継承した学問的系譜を「教育講演」の主題に選ぶこととした。話の順序として,まず1693年に発表されたE.ハリーの「ブレスラウ生命表」まで遡り,生命表の原理からはじめたい。近代的な生命保険事業における保険料計算の基礎も,進行中の超長寿社会における国民の平均余命の計算根拠も生命表なくしては成りたゝないのである。人類の寿命史上,奇跡ともいわれる日本人の長寿が何によってもたらされたのか,またどこまで長生きできるのかも興味あるテーマであろう。生命表だけでなく,老化や死亡の法則について先達の努力を跡づけておくことも必要ではなかろうか。そして超長寿社会が生命保険事業に与える影響も一度整理しておかねばならない。いま隆昌の一途をたどる「疫学」の方法論の一つに生命表を用いたコホート研究や介入実験が盛んに行われている。この方法論の先駆者であったわれわれが,蓄積されたデータとノウハウによって,社会へ還元すべき時代に入っていると思う。一例として「健康危険度予測」Health Risk Appraisalによる健康教育の実践をとり上げてみることにした。同時に,寿命予測の手法と相まって標準下体の条件法としての「年増法」の再検討にも触れてみた。
- 日本保険医学会の論文
- 1989-12-15
著者
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