乳癌手術前色素(Evans blue)注入法による乳腺リンパ流およびリンパ節転移様式に関する臨床病理学的検討

概要

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乳癌の診断のもと手術が行なわれた50例に対して,手術前にEvans blueを腫瘤周囲に注入して,術中のリンパ節郭清,術後のリンパ節検索の指標とした。同時に検出したリンパ節の大きさと位置を正確に記録し,さらに色素による濃染度,組織学的転移の有無を加えて,リンパ流上,転移を来しやすい部位を詳細に検討した。その結果,1)乳腺からのリンパ流を受け入れる最大の部位は内側腋窩群であり,外側腋窩群は主流外であると思われた。2)内側腋窩群の中でもcentral群,特に第2肋間貫通の肋間上腕神経の下方区域が腫瘤の位置を問わず,最も転移を来しやすい危険な部位と思われた。3)また外側胸動静脈に沿った群で乳腺組織に近い区域や,胸筋間リンパ節で胸肩峰動静脈に沿った中部の区域も,比較的早期に転移を来す部位と思われた。4)胸骨旁リンパ節については,第2,3肋間にリンパ流は多いと思われた。5)本方法は術中のリンパ節郭清や術後のリンパ節検索の指標として役立ち,さらに術後リンパ液漏出の防止にも有用であると思われた。
北里大学の論文
1989-02-28