日米安保条約の締結と朝日新聞 : 社説にみる日本防衛論
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概要
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第2次世界大戦終結直後の『朝日新聞』は,対日講和後における日本の安全保障方式として,米ソ両国により安全を保障された「非武装中立」案を理想として掲げた。しかし米ソ冷戦の顕在化に伴い,米国政府は日本を極東における対ソ軍事同盟に組み込んだ上で日本国内に米軍を配備する方針を固め,「非武装中立」による日本の安全保障構想は,その存率基盤を大きく損なうこととなった。そして日本政府および国民も,日米安保条約(安保条約)の締結に基づく駐留米軍による日本の安全保障方式を,唯一実現可能な手段として容認することとなった。こうした状況のなかで,『朝日新聞』は日本国民の反戦感情に配慮し,「日米安保条約の締結もやむを得ないが,日本が戦争に巻き込まれないように,この条約を米国と協調しながら上手に運用する必要がある」と主張を転換し,国民世論を誘導して日本政府に訴えていった。それは功を奏した反面,日本の安全を米軍に依存する状態を恒常化させ,その後の日米安保条約のあり方に大きな影響を及ぼす一因ともなったのである。
- 2003-12-31
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