現代鉄道政策の展開過程と鉄道改革 : 参入規制・内部補助型鉄道政策の崩壊過程検証
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概要
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現代の鉄道改革では国鉄の民営化が注目されるが,その前提として鉄道事業が企業的領域と公共的領域とに区分される必要がある。鉄道事業の全てが民営化できるわけではないからである。鉄道事業には採算性ある分野と不採算ながら社会的・国民経済的に必要とされる輸送サービスの提供という公共的な事業領域とが混在する。従来の参入規制・内部補助型の鉄道政策では,こうした相反する事業特性を区別することなく,国鉄という独占企業に一元的に供給させてきた。しかしながら,モータリゼーション,航空輸送の発達に伴い,競争的な市場が出現するに及び,鉄道輸送の市場シェアぱ大きく減少,国鉄経営は破綻した。現代の鉄道改革は,鉄道事業を企業的領域と公共的領域に区分した上で,企業的領域には市場原理,競争原理を導入し,当該事業の市場競争力を発揮させる一方,公共的領域に対しては,旧来型の内部補助によらず,明確な補助基準に基づく公的助成(=外部補助)システムの構築を目標としている。こうした新たな鉄道改革の実施に際して,上下分離を含む鉄道事業の区分経営は,参入規制・内部補助型鉄道政策から参入自由化・外部補助型鉄道政策への制度転換を図る上で重要な役割を果たしている。むろん本稿で分析する,北米,日本,欧州各国の鉄道改革の様相はそれぞれ異なるが,鉄道事業を企業的領域と公共的領域に峻別した上で,上下分離を含む区分経営方式を活用している点に最大の特徴がある。
- 作新学院大学の論文
- 2001-03-25
著者
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