現代交通政策にみるイコール・フッティング論 : 参入規制・内部補助型交通市場政策の崩壊過程検証 (藤井彌太郎教授退任記念号)
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概要
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交通調整の一手段たるイコール・フッティングは,交通政策の一大テーマをなした。かつてのイコール・フッティング論が,通路費の負担水準の相違を論点としていたのに対し,近年のイコール・フッティング論は,通路費の負担方式に焦点を当てている。前者は,参入規制・内部補助型の交通市場政策の下で唱えられたが,通路費負担方式の相違を克服するイコール・フッティングの実現は,参入自由化・外部補助型交通市場政策の到来をもたらしつつある。現代欧州の交通政策は,自国の交通政策とEU(欧州連合)の共通交通政策が重複する,二重構造を成す。EU政策の目標は,公正かつ自由な交通市場システムの創設にある。当初は,自由化の前に,ハーモナイゼーション(調和化)の実現が優先されたが,その完全実施は不可能なことから,自由化を先行させた。そして,自由化を進めつつ,ハーモナイゼーションを行っていこうというのが,現在のEUの政策スタンスである。欧州の鉄道改革に際しては,鉄道事業の公共性と企業性の分界が明示され,道路交通モデル,すなわち,上下分離とオープン・アクセスが導入された。上下分離とオープン・アクセスは,交通市場のイコール・フッティングという,EU共通交通政策の理念を実現する上で,極めて重要な機能と役割を果たそうとしている。
- 慶應義塾大学の論文
- 2000-08-25
著者
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