アメリカの選挙スポットの効果と問題点
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
アメリカでは、テレビにおける選挙CM (選挙スポット) は大統領選挙だけでなく、連邦議員選挙や州知事選挙など、さまざまなレベルの選挙で広く利用されており、選挙活動の中心に選挙スポットが位置している。選挙スポットは、候補者にとって、自分の名前を一般に広く知らしめるだけでなく、自分の政策をPRし、相手候補と争う道具となる。そのため、選挙スポットが選挙戦の争点を設定する機能がある。さらに、政治に関する知識が少ない層にとって、選挙スポットが果たす啓蒙機能も少なくない。しかし、有権者は選挙期間中に他の多くの情報の影響の中にさらされているため、選挙スポットが直接、視聴者の投票行動に与える効果については、限定されている。この傾向は特に大統領選で顕著である。また、自己正当化が目立つ「売らんかな」的な選挙スポットの内容に対して、「防衛機能」が働くため、視聴者は選挙スポットそのものに注目しなくなるという現象もある。相手候補を中傷する「ネガティブ・スポット」については、選挙や政治そのものに対する嫌悪感を生んでしまうため、投票率の低下につながるという研究もある。さらに、政党に頼らない候補者個人の選挙戦術として、選挙スポットを放映するケースが多いため、「選挙運動の個人化」を生んでいる。これは国民の政党離れとも無関係ではない。このように、選挙スポットは広く利用されているに関わらず、様々な問題点を抱えている。現在、アメリカ国内でも様々な改革案が出されているが、実行に移すのはいずれも難しいのが現状である。
- 敬和学園大学の論文
著者
関連論文
- アジア系アメリカ人の政治参加と代議制の現状 : 「政治的逆接」を超えて(延原時行教授・北嶋藤郷教授・Allan Blonde教授退任記念号)
- 「悪」の社会構築 : イラク戦争についての日米のメディアの比較分析
- イラク戦争開戦直前期における日米両国のメディアの内容分析
- アメリカの選挙スポットの効果と問題点
- トックビルの民主主義理論と「武士道」
- 米国のHDTV技術開発・導入政策 : 日欧との比較を中心として(第二部)
- 「アメリカ政治の主役」としてのマスメディア : 現状と新たな変化
- Comparative Content Analysis between the US and Japanese Media during the Run-up Period of the Iraq War
- 米国のHDTV技術開発・導入政策 : 日欧との比較を中心として(第二部)