JVの形成と連結に関わる会計方法論と基礎概念
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概要
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組織としての企業は,単一構造から多部門組織,マトリックス組織へと進化する一方,合併・買収によって組織はさらに多様化し,複雑化する.これは経営資源を単独で支配する垂直的統合である.これに対してジョイント・ベンチャーは,複数企業による戦略的提携であり,経営資源を共同で支配する水平的統合である.契約による戦略的提携や,資産負債と損益が直接出資者に帰属する組合型ジョイント・ベンチャーもその範疇に属すが,本稿が対象とするジョイント・ベンチャーは,独立法人格をもつコーポレート型ジョイント・ベンチャー("JV"と略記する)である.JV設立の動機・目的は,取引費用説,エージェンシー理論,戦略的企業行動理論等によって説明される一方,競争力を喪失した事業の分割・統合やオフバランス金融も動機となる.投資意思決定に有用な情報提供を使命とする会計としては,多様なJVの形成過程と一定時点の財務状況をできるだけリアルに捉えるべきである.ところが,JVの形成と連結に関わる会計基準は,いまだグローバル・スタンダードと呼びうる段階に達したものがない.わが国の制度会計では,JVの形成には持分プーリング法を適用し,連結にも持分法を適用する.現実のJVの形成には,企業結合型もあれば,会社分割型もある.出資比率は,古典的な50対50の均衡型もあれば,40対60のような非均衡型もある.出資比率にのみに注目すれば,JVは子会社または関連会社にすぎないが,合弁契約によって結ばれたJVパートナーは,共同支配の下で,リスクと便益をシェアする.上位者による下位者の単独支配ではなく,パートナーによる共同支配がJVの一大特徴である.その特徴をディスクロージャーに活かすには,比例連結が最適である.完全連結によれば過大表示となり,持分法適用によれば過小表示となる.後者はオフバランス金融や減損認識の遅れにつながる.これからの管理会計においても資産負債中心観を強化するならば比例連結による責任ポジションの把握は不可欠である.
- 立命館大学の論文
- 2005-09-30
著者
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