水素の燃燒に關する研究(第三報) : 水素の燃燒範圍に對する二エチルセレンの作用
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概要
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著者は前報に於て臭化エチル、沃化エチル、沃化メチル等の如きアルキル臭化物又は沃化物の蒸氣を水素に混和する時は、其の微量に依ても著しく水素の燃燒範圍を縮小すること、及び此等のアルキル臭化物又は沃化物は水素の活性化を防ぐを以て、水素の理論火焔傅播温度は著しく上昇して是等臭化物又は沃化物の夫れまでに到達するものであることを報告した。本報告は水素の燃燒範圍に對する二エチルセレンの作用に就ての研究であるが、本研究に依て二エチルセレンは、アルキル臭化物又は沃化物よりも一層高き理論火焔傅播温度を有し、即ちアルキル臭化物又は沃化物の理論火焔傅播温度は1550℃なるに對し、二エチルセレンの夫れは1750℃で又此の温度以下に於ては能く水素の活性化を防ぐを以て、水素燃燒の抑制作用は一層強大であることが判つた。而してその作用の一般状況は、前報に於ける臭化エチル等の場合と同樣であるから、其の作用の機構も同一の理論に依て説明することが出來る。二エチルセレンに依る水素燃燒の抑制の一例を示せば、二エチルセレン蒸氣を水素に對し2.4%(容積)を加へたものは、其の比重が空氣を1として018であるから、ヘリウムの比重0.14に比しては稍大きいのであるが、其の燃燒範圍は9-41%で、即ち水素の夫れの9-71%に比し約半減して居る。斯くして水素の比重を著しく増加せしめずして、其の燃燒又は爆發の危險性を著しく小ならしあることが出來た。
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