アルコール、エーテル、メチルサイクロヘキサン混合物の火焔傳播の低極限に就て
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概要
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適當なる可燃物の蒸氣と空氣との混合氣體に點火する時は火焔は共處から凡ての方向に傳播する。而して此の混合氣體中の可燃物の濃度を次第に減少する時は火焔の傳播速度は又次第に減少して終には全く火焔が傳播することが出來なくなる。此の火焔が傳播するに必要なる可燃性蒸氣又は氣體の最低の濃度を該可燃物と空氣との混合氣體に於ける火焔傳播の低極限(或は該物質の火焔傳播の低極限)と云ふ。低極限が小くて蒸氣壓が大きい物質を燃料として用ふれば内燃機關の始動は容易であつて此の低極限の大小は燃料の始動能力に關聯して極めて重要である。ガソリン、アルコール、エーテルの混合物は種々の點から内燃機關用燃料として興味あるものである。而して本邦産ガソリンの主要部をなす成分の一つとしてメチルサイクロヘキサンがある事は既に著者等の研究に依て明かである。其處で著者等はメチルサイクロヘキサン、エチルアルコール、エチルエーテルなる三種の蒸氣と空氣との混合氣體中に於ける夫々の火焔傳播の低極限を測定した。蓋し從來メチルサイクロヘキサン又は之れを含んだ混合物の低極限を實驗的に定めたものがなく、又ナフテン環連鎖が低極限に如何に影響するかに就ても未だ充分詳かでない。此の實驗は斯かる意味からも必要な事である。而して本研究の結果之等の三物質の混合物は火焔傳播の低極限に關して1%の誤差以内でLe Chatelierの法則に從ふ事、Le Chatelierの法則は同じ理論火焔傳播温度を有する可燃物と空氣との凡ての低極限混合物に於て適合す可きこと、メチルサイクロヘキサンの低極限は1.15%で、又其の理論火焔傳播温度は1480℃なること、並にナフテン環連鎖が低極限に特別な影響を與へない事等が明かになつた。
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