骨外性粘液型軟骨肉腫にみられるEWS-CHN融合変異遺伝子の解析
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概要
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骨外性粘液型軟骨肉腫(EMC)は軟部組織に発生する希な腫瘍である。近年,多くのEMC症例にEWS-CHN,TAF2N-CHN,TCF12-CHNという特異的な融合遺伝子が報告され,診断学に応用されているが,その役割については不明な部分が多い。今回9症例のEMCを分子生物学的に検索し,融合遺伝子の有無およびその機能を解析した。その結果,6例にEWS-CHN,3例にTAF2N-CHNの遺伝子融合が認められた。EWS-CHN融合遺伝子については,従来報告されている融合部位とは異なる新しい融合部位が複数みられた。融合遺伝子の役割を調べるため,新たに見出されたEWS-CHN融合遺伝子を組み込んだ発現ベクター(pEC1.5)とEWS遺伝子全長を含む発現ベクター(pEWS)を構築し,種々の量で細胞に導入して蛋白解析を行った結果,導入したpEC1.5のDNA量依存性に複数の蛋白において細胞内蛋白量の変動が認められた。ウエスタンブロットの結果,pEC1.5は80kD,pEWSは85kDに特異的蛋白の発現が確認された。ルシフェラーゼレポーターアッセイの結果,pEC1.5導入後の活性はコントロールに比べ,わずかに上昇する傾向がみられた。EMC発生とp53経路の関連性の有無を調べるため,p21プロモーターの下流にルシフェラーゼを組み込んだプラスミドを導入した細胞でルシフェラーゼ活性を測定した結果,pEC1.5導入細胞ではコントロールに比べて活性が低下しており,EWS-CHN融合遺伝子のp53経路への関与が推察された。これらの結果より,EWS-CHN融合遺伝子産物は転写・翻訳レベルで影響を及ぼし,ある蛋白の合成を低下,または増加させることが示唆され,EMC発症に至るメカニズムの一端を担っていると考えられた。
- 金沢医科大学の論文
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