タイの野生稲におけるイネノシントメタマバエの発生経過ならびに寄生蜂, Platygaster oryzae (CAMERON) および P. foersteri (GAHAN) の寄生率
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概要
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1.タイの乾季におけるイネノシントメタマバエの発生経過と, 主要寄生蜂, Platygaster oryzaeおよびP. foersteriによる寄生率の推移を明らかにすることを主目的に, タイ北部チェンライ県において, 1975年7月∿1976年8月の1年間, 野生稲株抽出による個体数調査を行った.2.各発育ステージの密度の推移から, イネノシントメタマバエは, 野生稲において年7世代を経過し, 各世代の推定発生時期は, 越夏世代;10月上旬∿5月中旬, 第1世代;5月中旬∿6月上旬, 第2世代;6月上旬∿7月上旬, 第3世代;7月上旬∿8月上旬, 第4世代;7月下旬∿8月下旬, 第5世代;8月下旬∿9月中旬, 第6世代;9月中旬∿10月上旬と推察された.3.越夏世代は, 乾季の12月∿2月間を主として1齢幼虫で経過した.これは, 休眠状態にある野生稲の腋芽内で発育停止状態となるためと考えられるが, この間の1齢幼虫は, 50株当たり平均500頭と, 非常に高密度に維持された.4.越夏世代の1齢幼虫は, 3月上旬に発育を開始したのち, 5月上旬に蛹化し, 5月中旬に羽化するものと思われた.この間の生存率は, 非常に低く, 3∿4月間に約70%が死亡した.したがって, この時期の生存率の高低は, 雨季の発生量を左右する重要な要因となるものと思われた.5.寄生蜂, P. oryzaeは密度依存的な寄生を行い, 世代が進み密度が高くなるにつれて, 寄生率は上昇し, 第6世代では65%に達した.P. foersteriは密度非依存的な寄生を行い, 寄主の7世代のいずれにおいても, 寄生率は10%以下の低率で推移した.このような寄主密度に対する両寄生蜂の反応は, すでに報告している水田における調査結果と一致した.6.P. oryzaeおよびP. foersteriが長い乾季を生存できるのは, マミー内の老熟幼虫や蛹の可能性は低く, 主として, 卵の状態で寄主の越夏世代の1齢幼虫に寄生している個体と考えられた.7.寄主の1齢幼虫体内で2月下旬まで生存したP. oryzaeは, 3月中旬∿4月下旬に, また, P. foersteriは, 3月下旬∿4月下旬に, それぞれ寄主幼虫をマミー化したのち, 5月上∿中旬に羽化し, 寄主の第1世代の卵に産卵するものと思われた.8.両寄生蜂の乾季における死亡率は大きく, 12月上旬∿4月下旬間にP. oryzae, P. foersteriいずれが寄生した寄主幼虫も, そのおよそ90%が死亡し, 4月下旬まで生存出来たのは, P. oryzaeが50株当たり平均19.6頭, P. foersteriが平均9.6頭にすぎなかった.このように, 乾季における両寄生蜂の死亡率が比較的高いことから, この時期の生存率の高低は, 雨季に発生する寄主個体群に対する寄生率のレベルに大きく影響するものと思われた.
- 日本昆虫学会の論文
- 1991-06-25
著者
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