矯正治療に対する患者と担当医の意識調査 : 効用値を用いた検討

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治療を受診する患者と治療を施す担当医の両者が, 治療結果について満足すべき合意に達するためには, 両者の主観, 価値観は治療前中後を通じて一致していなくてはならない.矯正歯科で動的治療を終了した患者118名および担当医4名に, 歯並び, 咬み合わせ, 横顔, 口元の変化, 相互の意志疎通など, 11項目についてアンケート調査を実施し, 治療前中後を通じての両者の主観の違いや合意の程度を比較検討し, 今後の臨床に役立てることを目的とした.それぞれの質問は, 患者および担当医の好み, 価値観, 主観に基づいて, その程度に応じた0∿100までの点数で判断した.この点数評価を効用値として, 評点尺度法により各質問の分布を調べ, 以下の結果を得た.1. 患者への歯ならび, 咬み合わせについての質問では, 矯正治療前後の比較で不満足から満足へと著しい変化を示し, 患者の治療に対する満足度が高いことを示した.また, 担当医への質問では, 患者と同様に治療前後で不満足から満足へと変化し, 治療後の結果に満足できる結果を示した.2. 担当医への下顎運動機能についての質問では, 治療前後で中点すなわち機能的に問題なしとする効用値に約50%が集中した.患者への噛み合わせ具合についての質問では, 治療前後で不満足の分布が満足へと移行し, 患者の95%が治療後に満足できる結果を示した.3. 軟組織の変化についての質問では, 患者および担当医ともに治療前後で効用値として中点である満足でも不満足でもない, 中庸が約20%を占めた.これら以外の対象は, 治療前後で不満足から満足へと変化し, とくに患者で著しい満足度を示した.4. 治療に対する意欲, 患者と担当医との意志疎通などいくつかの抽象的な設問については, 治療前後で著しい変化を認めなかった.患者および担当医とも同様な効用値の変化を示したが, 両者は同じような主観, 価値観, またはどちらにもかたよらない中庸な主観, 価値観であると考えられた.
日本矯正歯科学会の論文

矯正治療に対する患者と担当医の意識調査 : 効用値を用いた検討

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