下顎骨の偏位を伴う成人骨格性下顎前突症の一治験例

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概要

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顎骨の成長発育が期待できない成人の骨格性不正咬合症例の治療にあたっては, 外科的矯正治療が必要とされることが多い.しかし, 骨格的な不調和の程度や, 患者の希望, 全身的な健康状態等によっては, 矯正歯科治療のみによる補償的な改善をはかる場合や, 治療を断念することも少なくない.上下顎の歯列弓幅径に不調和を有し, 下顎骨の偏位を伴った, 成人のIII級不正咬合症例について報告する.患者は初診時年齢の女性で, 上下前歯部の咀嚼障害と, 叢生および正中のずれによる審美障害を主訴として来院した.上顎急速側方拡大装置およびスタンダードエッジワイズ装置を用いて, 非抜歯で, 矯正歯科治療単独の治療を行った.顎偏位については, 臼歯部に適切な被蓋関係が得られたことにより, 一部改善が認められた.犬歯と大臼歯においてI級関係が達成され, 適切なオーバージェットおよびオーバーバイトが得られた.現在, 保定開始後29カ月経過しているが, 咬合状態は安定している.
日本矯正歯科学会の論文

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