抜去歯でみた根面う蝕の分布

概要

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14,236本の抜去歯を用いて,根面う蝕の罹患部位と罹患状態について観察した。根面う蝕は4,394本(30.9%)でみられた。そのうち,罹患部位は遠心面(65.1%),次いで近心面(51.9%)に多く,唇(頬),舌(口蓋)面では少なかった。歯根面全周を4歯面,4隅角面の計8面に分けた場合,罹患歯面数が1面の抜去歯が1,559本(35.5%),2面のものが996本(22.7%),8面すべてにわたるものが179本(4.1%)であった。根面う蝕の歯軸方向への広がりは,セメント・エナメル境(CEJ)から歯根尖側最長距離は平均3.5mm,歯髄方向への深さは平均1.1mmであった。根面う蝕がCEJに位置するものは88.6%であった。各計測値の順位相関係数(スピアマン)より,根面う蝕は歯軸方向,水平方向,歯髄方向に三次元的に同時に進行することが示唆された。根面う蝕のCEJから根尖側最長距離とアタッチメント・レベルの比は2:5であった。アタッチメント・レベルは根面う蝕の歯根尖方向への広がりと相関がみられたが,水平方向および歯髄方向への広がりとの相関はほとんどみられなかった。
有限責任中間法人日本口腔衛生学会の論文
1998-01-30