アモルファス金属をコーティングした線材の摩擦力について
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概要
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矯正臨床において, ブラケットとワイヤーの間に生じる摩擦力は, 歯の移動の障害となるばかりか, 固定とする歯の近心移動の原因ともなり得る.近年摩擦力を軽減するために種々の形状のブラケットが開発されているが, 今回, 材質面での改善法として非晶質材料ゆえに低摩擦力性を有するといわれるアモルファス金属をワイヤーにコーティングし, その摩擦力軽減効果の検討を試みた.対照群としてコバルトクロム合金線を, 実験群としてタングステン系アモルファス金属をスパッタリング法にて0.1μmの膜厚でコーティングしたコバルトクロム合金線を用いて, 摩擦力, 機械的特性および表面構造を計測比較した.これによって以下のような結果を得た.1. ブラケットとワイヤーの間に生じる摩擦力はアモルファス金属のコーティングによって減少した.2. コーティングによってCo-Cr合金線の弾性や堅さなどの機械的特性は損なわれないことが確認された.3. コーティングによりワイヤー表面は均質になり, 表面粗さも有意に小さくなっているのが観察された.以上の結果から, 従来より臨床においてよく用いられているCo-Cr合金線にアモルファスコーティングを施すことによりワイヤーの機械的性質を損なわずに摩擦力を減少させ, 効率的な歯の移動が可能となることが示唆された.
- 日本矯正歯科学会の論文
著者
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昌山 浩三
徳島大学歯学部歯科矯正学講座
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天真 覚
徳島大学歯学部歯科矯正学講座
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瑞木 裕史
ホワイト矯正歯科医院
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渡辺 真太郎
徳島大学歯学部歯科矯正学講座
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松本 史生
徳島大学歯学部歯科矯正学講座
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河田 照茂
河田矯正歯科医院
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