14. monomorphicな増殖を示した耳下腺腫瘍の一例

概要

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今回我々は左側耳下腺部に発生した,比較的まれで,病理組織学的診断に苦慮した腫瘍を経験した。患者は56歳,男性。左側耳下腺部の腫脹を主訴に,本学付属病院口腔外科を紹介来院された。初診時の顔貌所見では左側耳下腺咬筋部に腫脹が認められ,触診により直径35mm大の可動性の腫瘤を認めた。発赤及び顔面神経麻痺などは認めなかった。CT,MRI検査において,左側耳下腺内中央部に類球形の嚢胞様病変が存在し,腔内に充実性の病変が突出していた。多形性腺腫の臨床診断のもと,耳下腺浅葉切除術を施行した。画像診断より悪性腫瘍も疑われたので,腫瘍の一部を術中迅速診断材料として切除したところ,漿液性の液体が流出した。凍結切片において,疎性結合組織中に増殖する腫瘍を認めた。腫瘍細胞は導管上皮に類似し,索状及び管状増殖パターンを示していた。切除材料において,腫瘍は隣接する正常な唾液腺組織とは線維性の被膜で隔てられ,単房性嚢胞内に突出していた。主に基底細胞様細胞が管状あるいは索状パターンを示し増殖しており,所々で好酸性の分泌物を含む腺管様構造もみられた。間質は乏しかった。また腺房様やシート状増殖,筋上皮様細胞の増殖を疑う所見もみられた為,特殊染色,免疫染色を行った。PAS染色では基底膜様構造物と腔内の分泌物に陽性像が見られた。S-100では間質の紡錘形細胞に強陽性像,腫瘍細胞の一部に弱陽性像がみられた。ラクトフェリンは管腔の内面に,α-SMAは腺房様増殖部にみられる筋上皮様細胞に陽性像がみられた。GFAP,CEA,EMA,α-アミラーゼはいずれも陰性であった。腺房細胞癌,上皮筋上皮癌,細管状腺腫なども疑われたが,以上の所見および分析により,確定診断を基底細胞腺腫とした。また,本症例の様な嚢胞形成は極めてまれであり,文献的考察と合わせて報告した。
福岡歯科大学学会の論文
2001-12-30

14. monomorphicな増殖を示した耳下腺腫瘍の一例

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