P31 伝統的な雑草管理に関する知識の消失 : 強湿田の事例(2-(1)水田)(2. 雑草の防除・管理)
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概要
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湿田や強湿田は,かつて日本各地の低湿地に幅広く分布していた里域構成要素の一つである。紀伊半島南部地方の沿海地域では,耕盤が顕著に深いかまたは耕盤そのもめを欠く水田は,「フケ」または「フケダ」と呼称され,1960年頃まで水稲生産の上で重要な土地利用項目の一つであった。こうした湿田や強湿田では,収穫や田植え時に田舟を用いた特異な稲作が行われていた。「フケ」では,今ではもはや絶滅に瀕した植物や動物,博物が,積極的な害虫駆除や雑草防除作業にもかかわらず,生産活動や信仰,娯楽と平衡を保ち共存していた。農業の近代化や機械化が不十分であった頃の耕地管理技術は,短期視野での生産上の効率は低いであろうが,長期的には生態保全上の大変有益な知識を含んでいる。しかし,高度経済成長とそれに伴う地域社会と生産構造の変化によって,水田の乾田化事業が進行し,労力が軽減される一方で耕作放棄が相次ぐようになり,今では「フケ」と呼ばれる水田はほとんど皆無となった。そこで,20世紀末の1999年まで離島であった紀伊大島を例に取り,強湿田における稲作慣行と雑草管理様式に関する知恵や技術が果たして継承されているのか,世代および年齢による差異の実態はどうなのかを調査した。
- 2003-04-19
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