イマゾスルフロンによる植物のアセト乳酸合成酵素の阻害
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
水耕栽培条件で, イネ(Oryza sativa, 品種:日本晴)の2葉期に1〜100ppbのイマゾスルフロンを処理すると、第3, 第4, 第5葉の伸長は30 ppb以上で阻害され, 根部乾物重は最低濃度の1 ppbから抑制された(Fig. 1)。30 ppbのイマゾスルフロンにより抑制されたイネの第3葉の伸長は, 100 ppmの3種の分岐鎖アミノ酸, バリン, イソロイシンおよびロイシンの添加によりほぼ完全に回復した(Fig. 2)。イマゾスルフロンはエンドウより調製したアセト乳酸合成酵素(ALS ; EC4. 1. 3. 18)の活性を大きく阻害し(I_<50>=24 nM), 基質のピルビン酸との間には非拮抗阻害を(Fig. 4), コファクターのチアミンピロフォスフェート(TPP)との間には不拮抗阻害を示した(Fig. 5)。イマゾスルフロンによる阻害は経時的にゆっくりと増大し, 2相性を示した(Fif. 6)。また, 最終定常状態の阻害は初期状態の阻害よりも約20倍強かった(Fig. 6)。イマゾスルフロンに感受性の低いイネから調製したALSは, 調製前のイネの葉令および光の有無による栽培条件の違いに関係なく, イマゾスルフロンに高い感受性を示した(I_<50>=14〜45 nM)(Table 1)。以上のことより次のことが示唆される。イマゾスルフロンは他のスルホニル尿素系の除草剤同様, 植物のバリン, イソロイシンおよびロイシン生合成系の最初のステップに関わっているALSに直接作用することにより, バリン, イソロイシンおよびロイシンの生合成を阻害する。本除草剤はslow-bindingなALS阻害剤であり, そのALS結合部位はピルビン酸およびTPPの結合部位とは異なる。イネの葉令および光の有無による栽培条件の違いによるALSの本除草剤に対する感受性の差はほとんどなく, また, 本除草剤に対して感受性を示す他の植物種における本除草剤に対するALSの感受性と大差ないことから, イネ本来の感受性の低さとは関係ない。
- 日本雑草学会の論文
- 1998-12-28
著者
関連論文
- ヘラオモダカに対するピペロホス・ジメタメドリン粒剤の作用性
- 19 グルホシネート、フルミオキサジン混合顆粒水和剤(S-878顆粒水和剤)の各種雑草に対する効果
- イマゾスルフロンの主要芝草雑草に対する除草効果および各種芝草に対する影響
- 縮合複素環スルホニル尿素の合成に関する研究 (第3報)
- 種々の縮合ヘテロ環部分を有するスルホニル尿素除草剤の合成
- イミダゾ [2, 1-b] チアゾール部分を有するスルホニル尿素の合成
- イミダゾ [1, 2-a] ピリジン部分を有する除草活性化合物新規スルホニル尿素の合成
- イマゾスルフロンの作用特性
- イマゾスルフロンのハマスゲ体内における移行性
- 芝生用除草剤イマゾスルフロンの作用性に関する研究 : 3.ハマスゲに対する茎葉処理効果の検討およびその吸収、移行性に関する考察
- 71 芝生用除草剤イマゾスルフロンの作用性に関する研究 : 3. ハマスゲに対する茎葉処理効果の検討およびその吸収、移行性に関する考察
- 芝生用除草剤イマゾスルフロンの作用性に関する研究 : 2.各種芝草類に対する影響
- 芝生用除草剤イマゾスルフロンの作用性に関する研究 : 1.除草効果および日本芝に対する安全性
- 17 芝生用除草剤イマゾスルフロンの作用性に関する研究 : 2. 各種芝草類に対する影響
- 16 芝生用除草剤イマゾスルフロンの作用性に関する研究 : 1. 除草効果および日本芝に対する安全性
- グルホシネート・フルミオキサジン顆粒水和剤(S-878顆粒水和剤)の各種雑草に対する効果
- イマゾスルフロンによるミズガヤツリの生理的変化およびその変化に対するバリン, イソロイシンおよびロイシンの影響
- イマゾスルフロンによる植物のアセト乳酸合成酵素の阻害
- イマゾスルフロンの水稲に対する作用特性
- 水稲用除草剤イマゾスルフロンの水田雑草に対する除草効果に影響を及ぼす要因
- 65 新規水田用除草剤イマゾスルフロンの作用機構
- 64 新規水田用除草剤イマゾスルフロンのイネ・雑草間の選択性とALS阻害
- 1 新規水田用除草剤イマゾスルフロンの除草特性、イネに対する安全性及び選択性
- 除草剤イマゾスルフロンの開発
- 除草剤イマゾスルフロンの開発