九州地方に発生したコヒメビエの小穂と穂の形態と低温での種子の死亡条件から推定した定着不可能地点
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
熱帯・亜熱帯を中心に分布するコヒメビエ(Echinochloa colonum (L.) Link.)が九州地方の熊本県と宮崎県で見いだされた。そこで, 九州に発生したコヒメビエの有効な識別点を調べ, 九州の耕地への定着の可能性を検討した。1. 熊本県玉名市産および宮崎県佐土原町産のコヒメビエの小穂は, 長さ2.5〜2.6mmで, タイ国産のコヒメビエの2.4mmよりやや大きく, 福岡県筑後市産のヒメイヌビエとほぼ同じ大きさであった。完熟小穂の50粒重は, 71〜73mgで, タイ国産のコヒメビエや筑後市のヒメイヌビエの50粒重より重かった。コヒメビエの第1包穎の長さは小穂長の58〜62%を占め, ヒメイヌビエの第1包穎より長く, コヒメビエの有効な識別点となる。コヒメビエの穂(花序)の最下の枝梗はヒメイヌビエより短く, 穂の幅はヒメイヌビエより著しく狭かった。コヒメビエは, 穂長と最下枝梗長の比が3.2以上となる点で, ヒメイヌビエから大まかに区分できる。2. 10%以下の含水比で-5℃で凍結処理したコヒメビエの種子は80%以上の発芽率を示したが, 含水比50%で1日3時間および6時間処理すると種子はほとんど発芽しなかった。すなわち, 湿潤土壌中で-5℃の条件が1日6時間続くとコヒメビエの種子はほぼ死滅し, この条件が3日から4日間連続すると完全に死滅すると認められた。3. 11月から翌年3月までの冬の期間に-5℃以下の最低気温の総日数が1988年から1992年までの5年間で4日以上となる場合をコヒメビエの定着の不可能な越冬条件として, 九州地方の114地点での気温データを調べた。九州山地や筑紫山地やその周辺などの32地点では定着不可能と推定された。最低気温が1℃上昇したと仮定すると, 32地点のうち7地点では定着可能になると推定された。
- 1996-08-26
著者
関連論文
- 中国地方中山間地域の小規模耕作放棄水田におけるイタリアンライグラス(Lolium multiflorum)とイヌビエ(Echinochloa crus-galli)を組み合わせた粗飼料生産体系
- P17 耕作放棄水田におけるイヌビエを利用した粗飼料生産
- 暖地水田でのショクヨウガヤツリ (Cyperus esculentus L.) の発生と生育
- 暖地水田の新しい帰化雑草アメリカミソハギAmmannia auriculata Willd. の形態と分布
- "Weed Research"第28巻1〜3号の内容紹介
- "Weed Research" 第27巻4〜6号の内容紹介
- 九州地方に発生したコヒメビエの小穂と穂の形態と低温での種子の死亡条件から推定した定着不可能地点
- P43 メーリングリストによる帰化植物の情報交換(1-(1)分類、分布、群落、遷移)(1. 雑草)
- イネ科水田雑草の分類,識別法と発生生態の解明(学会賞受賞業績)
- 8 水田に発生するイネ科多年生雑草に対する数種水稲用除草剤の作用
- "Weed Research" 第26巻1〜3号の内容紹介
- 雑草モノグラフ : 3.ショクヨウガヤツリ(Cyperus esculentus L.)
- 29 熊本県の休耕田に発生したコヒメビエについて
- 吉沢長人名誉会員を悼む
- カズノコグサとスズメノテッポウにおける中胚軸の伸長特性とジニトロアニリン系除草剤に対する反応の差異
- 北海道における帰化雑草の特徴と防除上の問題点