暖地水田でのショクヨウガヤツリ (Cyperus esculentus L.) の発生と生育
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概要
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1990年に帰化雑草ショクヨウガヤツリ(Cyperus esculentus L.)の発生が熊本県の早期水稲栽培田で確認された。このショクヨウガヤツリの発生状況と水田条件下での生育および塊茎形成の特性を調査し、水稲の作期幅の広い暖地水田においてショクヨウガヤツリが早期水田に侵入する要因を解析した。1)熊本県本渡市と天草郡苓北町のショクヨウガヤツリが多発する水田の深さ8 cm迄の土中にはm^2当たり9,600〜10,O00個の新塊茎と1,900〜2,400個の旧塊茎が含まれていた。2)水田状態でのショクヨウガヤツリの発生数と生育量は、早期栽培である4月下旬の水稲作付けの場合に大きく、普通期栽培である6月下旬の作付けでは小さかった。また、5月中旬の水稲作付けでは、ショクヨウガヤツリの発生数と生育量は著しく小さく、これは新塊茎の未成熟と母塊茎の消耗時期に湛水条件が加わって発生が抑制されたためと推察された。どの作期でも、中干しはその期間に発生するショクヨウガヤツリの株を増加させ、その程度は6月作付け>4月作付け>5月作付けの順に大きかった。ショクヨウガヤツリは、5月作付けと6月作付けでは耕起前に形成した塊茎から発生し、4月作付けでは主に母塊茎から発生した。水稲作期の違いや中干しの有無によって生じる塊茎形成数の変動は、水稲収穫時の地上部乾物重の変動と高い相関を示した。3)塊茎は湿潤ろ紙上では30℃の条件下で置床後3日目から萌芽し、7日目には萌芽率は、新塊茎で94%となり、旧塊茎では24%となった。含水比50%の土壌では、塊茎の90%以上は30℃の条件下では3日目に、18℃の条件下では11日目に出芽したが、含水比100%以上では塊茎は出芽せず、含水比が80%台に低下すると塊茎は30℃では2〜3日目、18℃では5〜8日目に出芽した。暖地水田でのショクヨウガヤツリの発生は、耕起・代かき前の生育状態によって異なり、作期が早いほど多かった。また、その後のショクヨウガヤツリの発生と生育は中干しによって促進されたが、湛水条件への適応性はミズガヤツリより低いと考えられた。
- 日本雑草学会の論文
- 1992-12-24
著者
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