精子細胞特異的Hsp70蛋白質抗原の発現は有袋類を含む哺乳類に保存されている
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概要
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哺乳類の精巣の解剖学的位置は, 発生期の位置から陰嚢に下降するものまで段階的に分類される. 陰嚢を持つ哺乳類では, 停留精粂により精巣が異常な位置に置かれると温度上昇を伴い, 精子発生の異常を起こして不妊を招く. 温度ストレスに対して精母細胞は感受性が高く, 後期精子細胞は比較的抵抗性を示す. これは, 後者が何らかの機構で保護されていることを示唆する. 一般に, 生物は温度ストレスがかかると, 細胞を保護するために重要な働きをするHsp70蛋白質を発現する. 我々は, すでにHsp70蛋白質ファミリーの一つであるHsc70t蛋白質が, マウスの後期精子細胞に恒常的に発現していることを示した. ここでは, 精巣の位置が異なる各種哺乳類の精単における精子細胞特異的Hsp70蛋白質の発現を, 抗Hsc70t抗血清を用いて免疫組織化学的に解析した. 精子細胞特異的Hsp70抗原の発現は, 有袋類を含む哺乳類に保存されていた. この抗原は, 他の脊椎動物には認められなかったが, 抗Hsp70抗体(BRM-22)による解析では, 恒温動物と変温動物に関わらず, 脊椎動物の精子発生における生殖細胞にはHsp70関連蛋白質の抗原の発現が恒常的に認められることが解った. これらの結果から, 哺乳類における精子細胞特異的Hsp70蛋白質の発現は, 粘子細胞の熱抵抗性の獲得に機能するよりも, 細胞の分化に関与している可能性が示唆される.
- 1999-04-25
著者
-
西田 隆雄
日本大学生物資源科学部
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藤本 弘一
三菱化学生命研
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恒川 直樹
三菱化学生命研・分子生殖発生
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西田 隆雄
日本大学生物資源科学部動物生体機構学研究室
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恒川 直樹
三菱化学生命科学研究所:日本大学生物資源科学部動物生体機構学研究室
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藤本 弘一
三菱化学生命科学研究所
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藤本 弘一
三菱化学生命科学研究所先端研究部門
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恒川 直樹
金沢大理
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