日本におけるウシのくわず病またはくいやみ病の組織病理的研究
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概要
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西日本の一部地方に, ウシのくわず病またはくいやみ病と俗称されている地域性栄養障害が発生していることは, 古くから知られている. 本病は, (1) 飼料および土壌中のコバルト含量が少ないこと, (2) 一定地区にのみ限定して発生すること, (3) 罹患したウシ(自然および実験例とも)を他の健康地帯に移動すること, さらに (4) 塩化コバルトの微量を経口投与すると, 数日にして食欲が増進し, 貧血その他の症状が急速に転快となることから, コバルトの欠乏症とみなされていた. 著者らは, このたび, 本病が諸外国において報告されているウシのコバルト欠乏症に一致するかどうかを究明する目的で, 本病の病理学的研究を行なった. その結果, 従来の諸家の知見にほぼ一致する所見を得, 本病がウシのコバルト欠乏症にほかならないことを明らかにしたのみならず, さらに新知見を追加し得た. 本病は, 全身の臓器および組織の高度の萎縮, 脾の著名な血鉄症, 脾小体の萎縮, 消失, 肝細胞の荒廃, 高度の脂肪変性およびグリコーゲン顆粒の減少または消失, 副腎皮質における高度の脂肪変性, 精巣の造精機能減退を特徴とする, 血液検査では, 小赤血球性貧血, 赤血球の大小不同, または変形赤血球の出現が認められる. とくに興味ある知見は, 各前胃粘膜の色素顆粒の減少または消失である. この事実の解明のためには, 内分泌学的, 組織化学的の研究を要するものと考えられる. さらに著者らは, くわず病の症状が出現してから, 塩化コバルトを毎日60mgずつ291日間経口投与したもの(牛E2号)において, 病理学的に明らかに中毒の所見が認められたことを特筆したい. なおビタミンB_<12>を毎日500〜600_γずつ110日間, 筋肉内に注射し, 引き続いて塩化コバルトを毎日40mgずつ98日間, 経口投与したもの(牛E1号)においても, 病理学的に経度の中毒所見が認められた.
- 社団法人日本獣医学会の論文
- 1963-12-25
著者
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