牛の所謂くわず症に関する血液檢査所見
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概要
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くわず症の血液像を検討すべく, その略々完全症状と思われるもの17頭を用いて諸種の調査を行い, 又コバルト塩投与(コバルト1日1頭当り15mg経口投与)後の血液像の変化を, 有症候牛群並びに対照牛群各5頭につき追究した。1. くわず症の血液像 1) くわず症の重症牛では, 小赤血球性で正又はやや低血色素性気味の貧血と, 白血球減少症が認められる。2) すなわち, 重篤なくわず症では。赤血球数354∿630万, 血色素量45∿62%で, 幼若赤血球は勿論認められず, 変形赤血球の出現, 小赤血球性の赤血球大小不同症が見受けられた。3) 白血球数は3,000∿8,100,又白血球百分率では好酸球, 淋巴球がやや増加し, 単球は減少して, 好中球は殆んど変化がないか, 又僅かに減少する。又好中球では分葉核型がやや増加し, 淋巴球は小型淋巴球が多く出現している。2. コバスト塩投与がくわず症血液像に及ぼす影響 1) コバルト塩投与後有症候牛群では約1∿2ケ月に造血機能は旺盛となり, 当初の貧血並びに白血球減少症は2∿4ケ月後には略々恢復するが, 同時に同量のコバルトを与えた対照牛群では何等の変化も認められない。2) 赤血球数並びに血色素量は試験開始後約2ケ月で既に当初の20∿30%増加し, 略々健康値となり, その後このままのlevelが継続される。変形赤血球は2ケ月後には殆んど消失し, 染色性も時を同じくして正常となる, 又幼若赤血球も稀に認められる。赤血球直径は次第に増大し, 健康牛の生理的動揺範囲内に入る傾向がある。3) 白血球数も赤血球数と平行して恢復過程を辿るらしく, 白血球の内容的変化については一定の傾向は認められなかつた。4) 外貌症状の恢復状態を知るため, 胸囲をその都度測定したが, 血液症状の好転と共に, 胸囲は増加し外貌状態も良好となる。5) 対照牛群においては, 何等血液検査上見るべき変化はないので, 1日1頭当りコバルト15mgを継続投与しても, 所謂Cobalt polycythemiaを惹起する懼はなさそうである。擱筆するに当りくわず症に関する研究を命ぜられ, 終始御指導, 御援助を賜つた恩師羽部前京大教授, 上坂京大教授, 平田神戸医大教授, 並びに本学着任以来絶えざる御激励と御援助を戴いた三宅学長, 桜井教授に深甚なる謝意を表する次第である。
著者
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