鳥型結核に関する研究 : II. 家兎の VILLEMIN 型結核について
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概要
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家兎の実験的鳥型結核症は感染菌量, 従ってその経過に従い最も急性の YERSIN型, VILLEMIN型及び関節病変を伴った慢性の VILLEMIN型の3型に分類し得る. YERSIN型に於ては家兎は約1カ月以内に斃死し著明な脾腫が認められるが肉眼的に結節形成は認められない. 組織学的にY型では肝・脾・骨髄等に大単核細胞及び巨細胞の集族が密発し, 夥しい菌が之等細胞の胞体内に特異な放射状配列をとって証明される. 一方V型では各臓器の結節形成が明らかとなり, 病変は次第に肺及び腎に限局し, 肝・脾・骨髄の病変は極めて軽度となる. すなわちY型とV型を比較すると病変の占坐部位に著しい相違がある. 著者等は前報に於て家兎の実験的鳥型結核症の一極端病型であるY型の経時的観察を行い, 菌の消長及び病巣の組織発生を追究したが, 今回は他の極端病型である慢性V型の経過を接種後20週迄観察した. 体重2kg前後の白色家兎に烏型結核菌 Flamingo 株0.001mg/kgを静脉内に接種し30分, 1週, 2週, 18日, 3週, 25日, 4週, 6, 8, 10, 15及び20週後各2頭を屠殺, 各臓器の定量培養, 病理組織学的検索を前報に記述した方法で実施した. 尚今回は接種後6, 15及び20週にツベルクリン皮内反応を実施し, 又各臓器に於ける病巣の拡がりを大型顕微鏡写真撮影装置のピントグラスを用いて描画測定し, 全視野に対する百分率を求めた. 菌の消長は Table 1及び Chart 1, 2に見る如く接種後3及至4週間のところに最初の山が見られ, この場合各動物の菌量模型は絶対量の少いY型を示す. 8及至10週後に於ては肝・脾・骨髄の菌量は著減を示すが, 肺・腎のそれは減少を示さない. 全体として菌量はこの時期に最小となり菌増殖曲線は収歛して来る. 従って各動物毎の菌量模型図は各臓器間に差の少ない矩型を呈する様になる. 接種後15週では菌量は再び全般的に増加するが, 菌量模型は矩型を保つ. 肝・脾・骨髄に菌量が多く, 肺・腎との間の傾斜が急峻で, 梯型を呈するY型菌量模型に対比させてこの様な矩型を呈し, 各臓器間に差の少ない或いは肺・腎の菌量が肝・脾・骨髄のそれを上廻る様な菌量模型をV型に特有のものとみなし, V型菌量模型と称した. 接種動物は約2週間後から40℃以上の発熱を示すものがあったが, 発熱の持続期間は数日及至3週間とまちまちで, 又殆んど発熱を示さぬものもあった. ツベルクリン皮内反応は6週後にはいずれも陽性で, 鳥型ツベルクリンに対する反応が最も著明であった. 15週後には反応は減弱して居るものが多く, 20週では極弱い反応が見られたに過ぎない(Table 2). 病理所見としては, 接種後2週間から脾腫が現われ, 3及至4週間ではかなり著明な脾腫を認める(Table 3). この時期に一致して肝・脾・骨髄にかなり著明な病巣が形成されて居る. この時期はまた菌量曲線で, 最初の山が見られた時期に一致して居り, 菌の分布と同様, 病変の占坐部位も又肝・脾・骨髄に概ね集中する. しかしこの場合病巣の性格は可成りY型のそれとは異って居る. すなわち病単はよく限局し, 数は少く且大型である. 屡々病巣の大単核細胞は萎縮して居り, Y型に見られる様な夥しい数の菌を見ることもない. 又Y型では見られなかった病巣の懐死が既に接種後2週間から見られ, 6週頃から病巣周囲に淋巴球浸潤を認める様になる. V型に於けるこの様な病巣の特異性は, 経過中に見られたツベルクリン反応の陽転を以て表示される増強された個体の抵抗力の現れであり, 少量の接種菌量が個体感作の時間的余裕を与えたものと考えられる. 肝・脾・骨髄の病巣は其後減少し10週後には極めて軽微となる. 一方腎皮質には4週から大単核細胞の集族が見られ, 肺では18日からまとまった結節状の病巣が出現し, いずれも徐々に増強する. 菌量曲線で第2の山が見られた接種後15週では再び肝・脾に病巣の発展が見られるが, 肝病巣は主としてグリソン氏鞘にあって, 小葉内には極少数の小型病巣が見られるに過ぎない. グリソン氏鞘の病巣は拡張した淋巴管内に見られ, それ迄に形成された病巣が, 肝に沈着した異物と同様の経路によって肝外に排出される過程を示す所見としで興味深い. 肺の病巣はこの時期に飛躍的に増強し, 結節性病巣の他に, 大単核細胞及び乾酪物質が肺胞内に鋳型に入れた様につまって居る広範囲の乾酪性気管肢肺炎を見る. 又腎皮質の病巣は6週頃には髄質に達し, 15週には之が腎盂粘膜を突破し, 乾酪物質を腎盂内に放出する像を見る. 10週から睾丸に壊死を伴った病巣が見られたが15週には殆んど全睾丸組織を占拠するに至る. 20週で屠殺した2頭及び185日で斃死した家兎には多発性の関節病変があり, 20週では肝の病変は極軽微で, 脾には1例に淋巴濾胞の硝子化を認めたのみで結核性病巣を証明せず, 肺・腎が主な病変占坐部位となる. THOMAS は家兎の実験的牛型結核症に於て斃死率及び病巣の性格上明らかに異る2相を認め, 第1相に於ては脾・骨髄・淋巴節病巣の優勢が見られ
- 社団法人日本獣医学会の論文
- 1962-10-25
著者
-
藤原 公策
東京大学農学部家畜病理学教室
-
藤原 公策
東大医科研
-
佐藤 昭夫
家畜病理学教室
-
山本 脩太郎
東京大学農学部家畜病理学教室
-
石田 葵一
東京大学農学部家畜病理学教室
-
佐藤 昭夫
東京大学農学部家畜病理学教室
-
山本 脩太郎
農工大
-
佐藤 昭夫
東京大学農学部
-
山本 脩太郎
東京大学農学部, 家畜病理学教室
-
石田 葵一
東京大学農学部
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