IQI/Jicマウスの唾液腺・涙腺炎:ヒト・シェーグレン症候群の新しい疾患モデル
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概要
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3〜15ヶ月齢の雌雄IQI/Jicマウスを病理組織学的に観察したところ, 主に顎下腺, 耳下腺および眼窩外涙腺に実質組織の破壊を伴う巣状のリンパ球浸潤を認めた. 本唾液腺・涙腺炎は雌の80%以上に認められ, その病変の程度は6ヶ月齢までは軽度であるが, その後は加齢に伴ない著しく進行した. 一方, 雄では病変出現頻度は加齢に伴い増加したものの, 病変の程度は月齢に係わらず軽度であった. 免疫組織学的に検索したところ浸潤リンパ球はTおよびB細胞から構成されており, 小病巣ではCD4陽性T細胞が優勢であったが, 大きな病巣ではB細胞が多数を占め次いでCD4陽性T細胞が続いた. しかしいずれの病巣においてもCD8陽性T細胞およびマクロファージは病巣周辺部に小数を認めるにすぎなかった. また, 病巣内の導管線状部上皮細胞は組織適合抗原クラスIIを異常に表現していた. 唾液腺・涙腺炎を発症している15ヶ月齢雄24例中8例の血清中にスペックル型のIgG抗核抗体を検出した. ヒトのシェーグレン症候群は主に女性に発症し, 加齢とともに進行し, 病巣内浸潤リンパ球はCD4陽性T細胞が優勢であり, また患者の多くはスペックル型のIgG抗核抗体を産生することが知られており, 今回観察したIQI/Jicマウスの唾液腺・涙腺炎はヒトのシェーグレン症候群と類似点が多い. IQI/Jicマウスはヒトのシェーグレン症候群の新しい有用な疾患モデルになりうると考えられる.
- 社団法人日本獣医学会の論文
- 1997-10-25
著者
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