輸送ストレスによる泌乳牛の乳汁体細胞の増加と末梢血好中球遊走能の亢進(臨床病理学)
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概要
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本研究では泌乳牛への生理的ストレスが,乳汁体細胞(SCC)と末梢血白血球機能に及ぼす影響について検討した.実験には健康な搾乳牛9頭を用いた.5頭は100 km を4時間かけて輸送(輸送群;TG)し,4頭は畜舎に繋留(非輸送群;NTG)した.血液及び乳汁は輸送開始後0,2,4時間,輸送終了後2時間,1,2,3,及び6日に採材した.これらの材料を用いて接着分子(CD 18及びL-selectin)の発現,遊走能,好中球アポトーシス率,血清可溶性L-selectin (sL-selectin),血漿コルチゾール,及びSCCの測定を行った.TGで著しいSCCと血漿コルチゾールの増加が認められた.TGで好中球に由来する白血球増加症が認められ,アポトーシス測定の結果,これらの増加はmarginal poolからの若い好中球に由来することが示された.好中球では遊走能の亢進と,L-selectin及びCD 18の細胞表面での発現低下が輸送後に見られた.輸送による血清sL-selectinの上昇が見られた.本研究から,輸送ストレスが白血球機能,とりわけ遊走能を亢進し,乳腺上皮細胞を介して白血球の乳汁中への浸潤を引き起こしていることが示唆され,著しい生理ストレスが乳汁SCCに影響を与えていることが考えられた.
- 社団法人日本獣医学会の論文
- 2004-04-25
著者
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中村 一郎
北海道大学大学院農学研究科生物資源生産学専攻酪農科学研究室
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矢用 健一
(独)農業生物資源研究所動物科学研究領域脳神経機能研究ユニット
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八木 行雄
(独)動物衛生研究所北海道支所
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八木 行雄
農業技術研究機構北海道農業研究センター
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塩野 浩紀
(独)動物衛生研究所北海道支所
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近山 之雄
(独)動物衛生研究所北海道支所
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大沼 愛子
北海道大学大学院理学研究科
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矢用 健一
(独)農業生物資源研究所昆虫動物生命科学研究部門
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中村 一郎
北海道大学大学院理学研究科
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