関東地域におけるオゾンによる植物影響評価 : ダメージ関数を用いたインパクト推計
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概要
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関東地域におけるオゾンの植物影響を,大気常時監視測定局で測定された光化学オキシダント(O_X)濃度データ,収穫量データおよびダメージ関数を用いて定量的に評価した。対象とした植物は農作物8種類(稲(水稲),小麦,大麦,大豆,カブ,トマト,ほうれん草,レタス)とスギである。はじめに,関東地域270局の大気常時監視測定局で測定されたO_X濃度データを用い,0_X≒オゾンとみなして植物生長期間における3次メッシュ(約1km×1km)別平均オゾン濃度とオゾン暴露量を算出した。次に,農作物については植物生長期間別平均オゾン濃度をダメージ関数に入力し3次メッシュ別植物種類別減収率を推計し,その減収率に収穫量を果して3次メッシュ別派収量と損失額を推計した。一方,スギに対してはオゾン暴露量をダメージ関数に入力し一本当たりの乾重量減少量を3次メッシュ別に推計した。推計結果によると,オゾンによって関東地域の植物は大きな影響を受け,農作物収穫量およびスギ乾重量が大きく減少している。農作物減収による被害総額は年間210億円にものぼると試算された。一般的に野菜類は穀物類に比ベオゾン影響を受け易く,中でもレタスは平均減収率約8%と極めて大きな被害を受けている。ほうれん草の減収率は約4%程度であるが,その経済価値が高いため損失額約22憶円とレタスの約20億円よりも大きくなった。一方,穀物の中では大豆がオゾン影響を受け易く,その減収率は約4%である。稲の減収率は約3.5%とそれほど大きくないが収穫量が多いことから減収量も多く,それによって損失額も約140億円と莫大になる。スギについては一本当たりの減少量のみが推計され,0_X濃度が高い内陸部における減少量は約1.5kgと評価された。本研究の結果は,関東地域におけるオゾンの植物影響が非常に大きいことを示した。一方,関東地域におけるOX濃度はやや増加傾向にあり,しかも高濃度域が都市域からその周辺誠に拡大している。これらのことから,植物影響の視点も考慮して光化学大気汚染対策を講じる必要があると考えられる。
- 社団法人大気環境学会の論文
- 2003-07-10
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